第4回愛媛救友会(松山大会)


第4回愛媛救友会(松山大会)・目次

1)デモンストレーション
(1)特定行為(松山市消防局)
(2)ショックパンツ(東温消防本部)
(3)異物除去(上浮穴消防本部)

2)自由演題

(1) 愛媛県立中央病院における緊急コール
     (愛媛県立中央病院 本田るい)
(2) 複数傷病者の救急活動  
     (伊予消防本部 生駒 隆)
(3) 東宇和消防の救急状況について
     (東宇和消防本部 中村 久)
(4) コンビチューブが有効だった救急事例  
     (今治消防本部 石川佳二)
(5) 海上保安庁について
     (松山海上保安部 渡部博文)

3) 特別講演:救急医療の近未来

(愛媛大学医学部救急医学教授 白 川 洋 一先生)

4.第4回愛媛救友会(松山大会)・症例検討など

1)デモンストレーション
(1)特定行為(松山市消防局)
(2)ショックパンツ(東温消防本部)
(3)異物除去(上浮穴消防本部)

2)自由演題

(1)愛媛県立中央病院における緊急コール(愛媛県立中央病院 本田るい)
(2)複数傷病者の救急活動(伊予消防本部 生駒 隆)
(3)東宇和消防の救急状況について(東宇和消防本部 中村 久)

第4回愛媛救友会(松山大会)・症例検討など


2.自由演題

      座  長    松山市消防局  牟 禮  里 義
                松山赤十字病院  松 下  敦 子
      助言者    愛媛県立中央病院  
                    副院長  上 田  暢 男  先生

(1)演 題 「愛媛県立中央病院における緊急コール」

   演 者    愛媛県立中央病院 本田るい

 自分の努める病院以外のことは、情報としてあまり持っていない私は他の病院でも同じように、 緊急時の対策として緊急コール(緊急放送)を実施しているのだろうと思っていました。ところが、 3月12日運営委員会で越智先生から、緊急コールというのをやっているところはありませんか。と 尋ねられ、「していますが」と答えたのは私だけでした。では緊急コールについて松山大会で紹介 してくださいと言われ、「はい」と返事をいたしましたが、先生のおっしゃられたこと。先生の意 図することが私に正確に理解できているのかどうか心配です。

 当病院で緊急コールが決議されたのは、平成4年12月24日です。平成5年1月より土曜・日曜が 休診となるため診療側が手薄となり、緊急時の対応に危機感を感じての木村センター長の対処でし た。

 昭和50年ごろまでは当直医がひとりで院内の様々な事態に対処していましたが、だんだんと主治 医中心となり何事も主治医に報告をして必要とあれば来棟という形に変わってきました。昭和56年 救命センターの開設に伴い三次救急の先生方は、内科・外科系・麻酔科でそれぞれにポケットベル を所持し看護婦の私からみて、大変連絡が速くつくようになりました。現在は一般当直医(日直・ 当直)1名、救命センター勤務医(内科外科系・麻酔科)3名、周産期センター(産科部門・新生 児部門)2名合計6名の先生が在院し時間外診療・救急医療に携わっています。しかしながらベッ ト数も850床をこえ、週休2日制となればいつでも意思にスムーズに連絡がとれるとは限りません。 手術中の最中である可能性もあり院内で救急事態(ショック・呼吸停止・心停止)が発生したとき は救命処置に支障のないように連絡手段を明確にしておかなければということで、24時間可能の緊 急放送が考えられました。

 当初の放送要領は、「ハリー先生、ハリー先生、至急○階○病棟○号室までお越しください。」 というもので、当直医以外で病院にいる先生に応援を求める内容でした。が、呼びかけをはっきり させる為に現在は、「三次の先生方・・・」とか「三次の麻酔科の先生○○までお越しください」 というようにかわっています。

 緊急放送の発信をはじめてから6年になりますが、いままでに一度も実態調査をしたことがあり ませんでしたので、皆様にお話しするのを機会に平成4年にさかのぼりましてアンケートを取りま した。特別な記録が残っているわけではないので、看護婦の記憶にある限りの実態です。

 25カ所にアンケートを依頼し20カ所からの返事(回収率80%)がありました。


     ┌────┬────┬──────────────────────────────┐
     │ 年号   │  件数  │              状                  況                        │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 4年   │  なし  │                                                            │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 5年   │  1件  │  OMI・心不全の患者‐VT・Vf・呼吸停止                │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 6年   │  1件  │  突然の呼吸停止                                            │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 7年   │  2件  │  呼吸停止・心停止    連絡なしのCPA患者搬送              │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 8年   │  5件  │  呼吸停止・心停止    窒息    連絡なしのCPA患者搬入      │
     ├────┼────┼──────────────────────────────┤
     │ 9年   │  3件  │  呼吸停止  脳内出血                                        │
     └────┴────┴──────────────────────────────┘
 一般当直に連絡のあった患者で来院時呼吸御制・チアノーゼがあり三次Drに信件数の一番多かった のは救命外来でした。どこからも連絡がない時のCPA患者の搬入は、救命外来勤務の看護婦がひと りであるためすぐさま一斉放送で先生に連絡をいれなければ、ポケットベルでの連絡は時間的に無理 です。病棟内においても予期しない突然の呼吸停止・心停止は発生しますが、深夜帯でも2人以上の 看護婦が勤務しているため、ひとりは患者への心肺蘇生処置(CPR)を実施し、もうひとりが医師 (三次麻酔科医)に連絡をいれることができるため、その医師が緊急時の対応を別の場所でしていな いかぎり緊急放送は不要なのです。このアンケートにより緊急連絡の方法が徹底されていると推察し ました。発信件数は少ないですが、新入看護婦に緊急放送のことをきちんと指導しているのは、就職 後3カ月までにと答えた部署が11カ所ありました。24時間方法可能であることを指導していなければ、 夜中だからとためらっているうちに取り返しのつかない事態を招いたのでは三次救急を実施している 値打ちはなくなります。たとえ1年に1回であっても必要時に必要な対処ができなければ、命は守れ ないと自分に言い聞かせております。

(顧問 木 村 誉 司)

 ちょっと補足させていただきます。三次の救命センターに入って来る患者が年間1、300少しです。 アンケートを取ると「放送はもう。」という事はあるが、要望があったからと言ってやめる訳にはい かない。何処かで多数の患者が発生したときにその時に居たドクターが応援する。ということですか らこれはそのまま続ける、という事で補足させていただきます。

(座長 松 下 敦 子)

 緊急コールを導入する前と、導入してからとでは何か違いがありましたら教えて下さい。

(演者 本 田 る い)

 連絡が取れやすく、看護婦は業務がスムーズに行えて良くなったと思います。


(2)演 題 「複数傷病者の救急活動」

   演 者    伊予消防本部  生駒 隆

 本組合は、愛媛県のほぼ中央に位置し、伊予地区の1市4町1村で構成され、昭和48年に事務組合 を発足しました。

 面積は約316平方km人口93、000人で、消防体制は1本部2署4出張所、消防職員134名で消防行 政に対応しています。救急隊員については、署のみ一部専任で他は消防隊と兼任となっています。

 高規格救急車は未だ整備されていない。2B型救急車7台が各署所に配備され、基本的には各署所 の救急事故については、各署所の救急隊が対応するという体制をとっていますが、管内の医療機関は、 救急告示病院1で他は病院4、診療所44でますが総合病院はありません。全て一次医療機関のため、 搬送の約92%が管外の医療機関で殆どが松山市の救急告示病院(二次医療機関)に搬送しており、出 動時間は平均で60分かかります。山間部からの搬送においては長時間要する場合もあります。そのた め、出動中同一管内で第二次救急要請時、または、複数傷病者発生時には直近の救急隊に応援要請を する体制をとっています。

 ここに紹介する事例は、管内を縦断する基幹道路(国道56号・33号)2本のうち、国道56号線で発 生した普通乗用車同士の正面衝突事故で2名の命が奪われたものです。

 1 発生日時  7月19日(火)午後10時50分頃

 2 発生場所  伊予市内より大洲方面へ約4kmの国道56号線上

 3 覚知時間  午後10時54分(119)

 専用電話で、「交通事故で車の中に人が閉じ込められている。詳細については不明。」という内容 で入電し、救急車・救助工作車・タンク車の3隊9名で出動しました。

 現場に近づくにつれ、国道の走行車線は渋滞し、反対車線は車が通行していない状況から事故の大 きさを想像しながら現着すると、衝突した3台の普通乗用車が両車線を塞ぎ、通行不能な状況であり ました。

 4 事故の概要

 大洲方面へ走行中の普通乗用車(A)が反対車線へはみ出し、対向の普通乗用車(B)と正面衝突 し、その反動で普通乗用車(A)が走行車線に跳ね返り、同方向へ進行中の普通乗用車(C)に衝突 し、普通乗用車(A)が車の原形をとどめないくらいに大破。普通乗用車(B)は、エンジンルーム が削り取られボンネットがめくり上がった状態となっていた。

 5 傷病者の観察

(A)運転者 24歳男性

意識(JCS300)、呼吸(感ぜず)、脈(触れず)、瞳孔(約7o)

(B)運転者 58歳男性

意識(JCS300)、脈拍(60回/分)、自発呼吸(あり)

 2名とも救出不能状態であり、1台の救急車に収容不可能な状態であるがため、小隊長が本部に応 援要請の指示、その後もう1台(B)に同乗者がいるとのことで観察する。

(B)助手席 61歳女性

意識(JCS100)、顔貌(苦悶状・頻呼吸)、脈拍(90回/分)、頭・胸部打撲、右腕骨折疑い

 当傷病者は、現着前に通行人により救出され、歩道に寝かされた状態でした。なお、(C)運転者 については、負傷していないとのことでした。

 救急隊は、救助活動を要しないレベル100の(B)同乗者を搬送すべく車内収容し救急告示病院へ搬 送。

 救助隊は、観察結果及び救助に要する時間等から判断し、救助資機材を使用し(B)運転者から救 出(現着から10分後)する。次いで(A)運転者を救出(現着から25分後)、応援要請した2台の救 急車にそれぞれ引き継ぎ救急告示病院に搬送した。

 傷病者の経過については、(A)運転者は死亡、(B)運転者は4時間後に死亡、(B)同乗者は 1カ月の重症でありました。

 この事故から、複数重症傷病者の救急事故に対しての反省点としまして、

ア.現場は住宅密集地で通行止めになっていたため野次馬が参集して混乱し、現場把握が容易で なかった。

イ.通報者が現場を見ての通報でなかったため、情報収集不足であり、増強要請のタイミングが 困難を極める結果になった。

 現場の混乱を消防隊、救助隊、更には警察と連携を密にしていか に整理すべきかが、活動の成果を左右する重要なキーワードであるということを痛感しました。

 また、消防隊との連携のあり方については、現場では短時間で正確に観察する能力が求められ、救 急隊の3名だけでは限界があり、消防隊員と協力して対処しなくてはならない。消防隊員はともすれ ば、事故の状況把握等が優先する傾向にあり、傷病者観察や応急処置が遅れたり、傷病者管理ができ ない状況になってしまうことがある。傷病者を的確に確保し、観察し応急処置を行い迅速に搬送する ことが最優先ということを踏まえ、指揮体制も含め消防隊との連携を図るためディスカッションや連 携訓練を積極的に実施し、検討しなければと再認識しました。


(3)演 題 「東宇和消防の救急状況について」

   演 者    東宇和消防本部  中村 久

 東宇和事務組合は愛媛県の西南部に位置し、東宇和郡内の明浜町、宇和町、野村町及び城川町の4 町で構成されている。

 面積437、41km、人口は平成9年3月末で39、836人で、北は八幡浜市及び三瓶町、北東に大洲市、肱 川町、川辺村と東は小田町、柳谷村に接し、一部を県境の高知県境しており、西南は宇和海に面し吉 田町、三間町、広見町、日吉村に接する東西40 、南北12 に及ぶ広域な圏域である。

 主要道は国道56号線大洲市・宇和島市へ延び197号線が大洲市・日吉村を経て高知県へ通じ、また、 四国横断自動車道宇和・大洲間の中心杭打ち式や都市計画道路宇和島・宇和線及び関連経路の計画が 打ち出されるなど、南予の玄関口として飛躍的な発展をみているところです。

 救急概況ですが、当本部は昭和53年4月に消防業務を開始し、東宇和郡宇和町に消防本部本署を野 村町に支署を設置し、職員数45名で構成している。

 管内の二次救急病院は救急告示病院が公立1、私立1、その他公立1の3病院で曜日毎に当番し、 土・日曜日を輪番制で24時間体制で実施、一次救急当番医制(8時30分〜18時)日・祭日で体制して いる。救急体制は、管内に総合病院がなく、管外医療機関への搬送が多く長時間の出場となるために、 本署・支署にそれぞれ救急車2台の計4台を配備し、当努者6〜8名の兼任隊員で運用している。救 急処置拡大に伴う職員研修(救急 課程135時間)は、24名が修了し、兼任救急隊員全員の研修を計画 している。また、救急資機材の整備は順次行っているが、高規格救急車の導入とに計画している。救 急救命士は、現在2名が国家試験に合格し、実務しながら隊員の教育に努め、養成計画は6名である。

 平成8年の救急出場件数が1、050件(前年比48件増)、搬送人員が1、003人(前年比19人増)となり、 業務開始以来最も多い年となった。

 事故種別における救急搬送状況ですが、事故種別では第1位が急病の536人(前年比30人増)、第 2位がその他の181人(前年比32人増)、第3位が一般負傷の136人(前年比14人増)、続いて交通事 故の124人(前年比45人増)となっている。これは、昨年に比べ急病とその他(転院搬送178人、その 他3人)が増加したが交通事故は減少している。

 傷病程度と急病者の病状分類は、搬送人員1、003人のうち、中等症409人(40.8%)、軽症306人 (30.5%)、重症268人(26.7%)、死亡20人(2.0%)の順となっている。急病者(転院搬送者を除 く)536人の病状分類では、循環系210人(前年比30人増)、次いで消化系85人(前年比11人増)とな っている。なお、循環系では心疾患が92人(前年比23人)と増加している。

 居住者別状況と町別状況は、搬送人員1、003人中、管内居住者は913人(91.0%)、残り90人(9.0%) が管外居住者である。管内居住者では、宇和町469人(前年比16人増)、野村町255人(前年比31人増) となっている。出場件数1、050件の町別状況では、宇和町573件、野村町287件、城川町96件、明浜町94 件となっており、宇和町では人口比で33.4人に1件の割合で救急車を利用している。現場到着及び収 容所要時間状況ですが、現場到着に要する平均時間は8分36秒(前年比53秒遅い)で、最長時間は74分 である。現着時間区分では、3分未満が313件(29.8%)、3〜5分が181件(17.2%)を占める。署轄 別では、本署は平均7分25秒に到着しているのに対し、支署では平均10分42秒を要している。病院収 容に要する平均時間は31分57秒(前年比2分36秒遅い)で、最長収容時間は3時間10分である。

 なお、収容時間が長いのは管外搬送や町外の二次救急医療施設への搬送(片道15km以上)が多いた めであり、収容後の帰署時間を含めると救急車の稼働時間は非常に長いものとなる。

 応急処置を必要とした傷病者は、不搬送を含め674人(91人増)で1、322件(313件増)の応急処置を 実施した。従来の応急処置で最も多いのは酸素吸入の224件、次いで固定78件、気道確保54件となって いる。心肺蘇生は26件(5件増)実施し、その内8件は不搬送(死亡・医師確認)となっている。

 また、従来の応急手当に加え処置拡大に伴う9項目のうち、血中酸素飽和度測定428件(155件増)、 血圧測定261件(80件増)等の観察処置が増え、今後これらの処置内容が増大すると思われる。

 年齢区分別では、老人(65歳以上)の512人(51.0%)、次いで成人(18〜64歳)の419人(41.8%)、 少年(7〜17歳)の39人(3.0%)、乳幼児(1歳〜7歳)の32人(3.2%)、新生児(28日以内)の 1人(0.1%)の順となっている。老人の搬送は、年々増加しており搬送人員の約半数を占めている。 特に急病の老人搬送人員は311人(58.0%)と昨年より18人多くなっている。

 病院等所在地別及び収容機関別状況では、管内搬送が773人(前年比10人減)、管外搬送が230人 (前年比29人増)となっており、管外搬送比率22.9%で昨年比が2.5ポイントの増となっている。全搬 送人員の増加に反して管内の病院搬送が前年に比べ減少しているが、これは転院搬送の増加が原因であ ると考えられる。また、管内では二次救急当番医(山本・宇和・野村病院)が744人(全体の74.2%) となっており、管外では宇和島市が174人(前年比28人増17.3%)とトップで、次いで大洲市29人(2.9%) となっている。収容機関別では、救急告示が43.7%(前年比で0.7ポイント減)、その他が56.3%とな っている。

 以上、当本部の救急状況について述べましたが、都市部に比べ高齢化が進み、一部の町では33.3% と3人に1人は65歳以上であり、全体においても27.8%となっている。

町 別人 口人口(18〜65歳未満) % 人口(65歳以上) %
宇和町17,7609,908 (55.8%)4,456 (25.1%)
明浜町5,0412,623 (52.0%)1,667 (33.1%)
野村町11,818 6,381 (54.0%)3,223 (27.3%)
城川町5,2172,554 (49.0%)1,738 (33.3%)
全 体39,83621,466 (53.0%) 11,084 (27.8%)

 また、高規格救急車の導入について県下16消防本部の最後の方となりましたが、色々な問題を抱えており、特に医師の指示確保が未定である。

 高規格救急車の導入による医師の指示確保については

管内救急病院の指示
南予救命救急センターの指示
近隣二次救急病院の指示

 以上3点について検討中です。


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