■患者状態適応型パスシステム(PCAPS)について
  
 本ページでは、患者状態適応型パスの概要を理解するために、患者状態適応型パスの考えの元となっているクリティカルパス、クリニカルパスについて説明するとともに、患者状態適応型パス(PCAPS)とその利点について説明しています。

 患者状態適応型パスシステム(Patient Condition Adaptive Path System:PCAPS)は、患者状態適応型パスを用いて医療の質を改善するシステムです。なお、患者状態適応型パスシステムの略称であるPCAPSの読み方は、「ピーキャップス」となっています※。


本ページの内容:
 1. クリティカルパスとは
 2. クリニカルパスとは
 3. 患者状態適応型パスとは
 4. 患者状態適応型パスシステムによる利点



1. クリティカルパスとは
 クリティカルパスの手法は、1950年代に産業界で作業工程の効率化、標準化を行なうための手法として生まれました。クリティカルパスとは、プロジェクトや一連の業務を行なう場合、プロジェクトや業務の目的を達成するまでに考えられるプロセスの中でプロジェクトのスケジュールを決定付けている作業の流れのことです。クリティカルパスに基づいた作業表によって業務を行なったりします。

クリティカルパスの例


クリティカルパスを用いた作業表の例

作業内容 所要日数
車体の設計 3日
見積もり 1日
部品の購入 2日
車輪部分の組み立て 3日
車体部分の組み立て 4日
車輪部分と車体部分の結合 1日
テスト走行 3日
完成 1日




2. クリニカルパスとは
 産業界におけるクリティカルパスの手法を医療に導入したものが、クリニカルパスです。
主に、診療に必要な治療・検査やケアなどを縦軸に、時間(日付)を横軸にとった診療スケジュール表のことを言います。
クリニカルパスを使用することで、モレのない診療行為を効率的に行なうことができ、医師・看護師・医療スタッフ間でのコミュニケーションが増すことが期待できます。

小児肺炎のクリニカルパスの例

Medis-DCのホームページ(http://www.medis.or.jp/)内クリティカルパスライブラリより引用


3. 患者状態適応型パスとは
 患者状態適応型パスは、「患者状態」を基軸として、複数の「目標状態」がリンクされ分岐・結合を形成しながら最終目標状態に至る臨床経路を示す俯瞰的なモデルで示されます。患者状態の様相がどのように変化していくのかを可視化したものといえます。目標状態毎にユニットを形成し、患者状態に適応した医療業務を、患者状態が当該ユニットの目標状態に達するまで実行します。目標状態に達したら、当該ユニットは終わることになります。終わった時点での患者状態に最適な次なるユニットを移行ロジックがナビゲートし、医療者が確定して次なるユニットに移行します。このように次々と最適なユニットに渡り歩いていき、当該患者がたどった医療プロセス履歴が積み上げられていきます。
 適応するユニット内で診療を展開していく中で、当該ユニットが設定する患者状態に適さない患者状態に変化することがあります。あるユニット内にいて、変化した患者状態が当該ユニットの患者状態適応範囲を超えた場合には、ただちに適応するユニットに移行するロジック機能が組み込まれています。たとえば、術後に当該ユニット適応上限を超えた出血量が発生した場合などがそれにあたります。



  従来の単一の時系列をもつ表形式のクリニカルパスでは、特に内科系の診療のように、初期治療を行なった後に患者の状態変化を見ながら診療方針を調整していくような疾患の場合、作業工程が複数あり、かつ多様に遷移するため対応できませんでしたが、患者状態適応型パスはこの点を克服しています。なお、患者状態適応型パスシステムを採用する場合、患者の状態変化は多様性に富んでいるためその複雑性から紙ベースでの運用よりもITシステムによる運用の方が親和性が高くなります。
 患者状態適応型パスは、@臨床プロセスチャート Aユニットシート BPCAPSマスター の3つの知識フレームからなります。

@ 臨床プロセスチャート 臨床プロセスチャートは、ユニットの連結からなる臨床経路の俯瞰図であり、対象疾患について想定されうる治療の大まかな流れと全体像を把握する機能があります。

A ユニットシート ユニットシートは、それぞれのユニットでの医療プロセスを把握するために使われます。ユニットシートは、下記の項目から構成されます。

B PCAPSマスター ユニットシート内に落とし込む臨床知識の基本コンテンツを集約したもの。


がん(手術:乳房温存・切除術)における患者状態適応型パスの臨床プロセスチャート



ユニットシート




4. 患者状態適応型パスシステムによる利点
 患者状態適応型パスシステムを採用した際の利点は、主に下記の点が挙げられます。


参考文献:『医療安全と質を保証する患者状態適応型パス(PCAPS)統合化システム開発研究 平成17〜19年度 総合研究報告書』

※「PCAPS」、「ピーキャップス」、「患者状態適応型パス」は商標登録されています。


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