過去の挨拶

 本教室は、第一内科学講座の呼吸器病学の伝統を受け継ぎ、呼吸器病学教室として独立してから、お蔭様で昨年創設5周年を迎えました。教室員、OBの皆様ならびに大学関係者各位に深謝いたします。

 さて、本教室では、この5年間、診療、教育、そして研究の各領域を充実、発展させるための環境と体制作りに努めて参りました。今では教室員も倍増し、現在約100名の教室員を擁するようになりました。教室員の増加に伴い、関連・準関連施設も増えており、大学附属2病院のほか、県内の基幹病院15施設に呼吸器内科医を派遣して呼吸器診療を展開しており、神奈川県の呼吸器診療を担っております。

 教育面では、学生教育、研修医教育、そして大学院教育の全てに力を入れております。学生教育については、親身の指導を心がけ、平成29年にはベストティーチャー賞・団体賞を受賞いたしました。また、神奈川県内の医学部5年生を対象とした胸部画像診断セミナーは、教室設立前から開催を続けており、昨年は参加者が60名を超えています。研修医に対しては、全国の初期研修医を対象とした日本呼吸器学会主催初期臨床研修医サマーセミナー(現在は、臨床呼吸機能講習会の初期臨床研修医コース)を2017年に立ち上げ、現在も運営を担当しております。また、大学院生も毎年5名前後の進学者があり、総勢は20名を超えました。大学院修了後は海外の著名な研究機関に留学を推奨しており、現在2名が留学中となっています。

 研究は、閉塞性肺疾患(喘息・COPD)、肺癌、びまん性肺疾患(間質性肺炎、急性肺障害)、および呼吸器感染症の4つのグループに分かれて基礎、臨床研究を行っておりますが、グループ間の垣根を低くして、分野を超えた共同研究をしやすくしています。研究成果については、国際学会で発表し、海外の一流医学誌に掲載して、世界へ情報発信をすることを心がけております。来年10月に京都で開催予定のThe 25th Congress of the Asian Pacific Society of Respirology (APSR 2020)において、私はプログラム委員長を務めており、教室を挙げて本国際学会への支援を行っております。大学院生を始めとした若手教室員にとって、世界の舞台で発表を経験する良い機会となるものと期待しております。

 診療については、安心・安全の高度な呼吸器診療を提供に心がけ、先進医療の取り組みも行っています。学会の診療ガイドラインも、教室関係者が、肺癌、肺炎、COPD、喘息、喘息とCOPDのオーバーラップ、および咳嗽・喀痰の診療ガイドラインの作成に関わっています。特に、咳嗽・喀痰の診療ガイドラインは、私が喀痰のセクションエディターを務め、喀痰に関する世界初のガイドラインとなっています。

 本教室の特色として、世界に開かれた貿易港を要する横浜と言う土地柄もあり、全国各地から入局者が集まり、全国で最も入局者の多い呼吸器内科の教室の一つとなっています。そして、教室員の過半数が卒後10年以内の若手であるため活気に満ち溢れ、さらには、この数年の新入局者の約半数を女性が占めており、職場が華やかになっています。私は、日本呼吸器学会で、2016年から、将来計画委員会・男女共同参画委員会の委員長を務めており、日本アレルギー学会でも本年6月まで男女共同参画委員会の委員長を務めておりました。この経験を生かして、男性も女性も共に働きやすい職場環境の整備に努めております。

 次の5年間を教室の成熟期と位置づけ、教室員においては、日々の仕事が充実し、満足感、達成感が得られ、仕事が楽しいと感じられるような教室づくりに励んでいきたいと考えております。そして、横浜市および神奈川県の呼吸器内科医不足の解消に向けて、呼吸器専門医の育成に努めて参りたいと存じます。

 今後ともご支援の程よろしくお願い申し上げます。

令和元年9月吉日
呼吸器病学教室 主任教授 金子 猛



横浜市立大学医学部呼吸器病学教室のホームページにアクセスしていただきありがとうございます。

呼吸器病学教室は、横浜市立大学大学院医学研究科の教室の一つとして、平成26年(2014年)4月に新設され、呼吸器病学の研究を展開しております。医学部においては呼吸器内科学の学生教育を担当し、そして附属2病院(横浜市立大学附属病院、同附属市民総合医療センター呼吸器病センター)においては、呼吸器内科診療に従事しております。さらに、教室からは神奈川県内の12の基幹病院に呼吸器内科医を派遣しており、地域医療に貢献しております。

当教室の起源は、第一内科(リウマチ血液感染症内科/呼吸器内科)にあります。呼吸器生理学の権威であった大久保隆男先生が昭和58年(1983年)に第一内科教授に就任され、呼吸器内科を中心とした教室作りが始まり、鈴木俊介助教授、池田大忠講師をリーダーとして全国有数の呼吸器内科の教室に発展しました。大久保教授は、平成9年(1997年)には第37回日本胸部疾患学会(現日本呼吸器学会)総会の会長を務められました。大久保教授が退官された後は、膠原病を専門とする石ヶ坪良明先生が平成10年(1998年)に教授に就任され、石ヶ坪教授の指導の下、呼吸器内科は第一内科の呼吸器グループとして活動し、教室再編成によって、昨年に呼吸器病学教室が誕生しました。私はこの間、平成17年(2005年)に附属病院初代呼吸器内科部長、翌平成18年(2006年)には、附属市民総合医療センター呼吸器内科教授に就任し(平成19年~平成24年まで副病院長を併任)、平成26年(2014年)、呼吸器病学教室の初代主任教授に就任いたしました。

さて、呼吸器疾患の罹患率は高齢化とともに急増しており、WHOは呼吸器疾患が21世紀の人類にとって最も重要な問題になると予測しています。さらに、DPCデータの分析による将来予測でも、今後数十年、入院患者数が最も増加するのは呼吸器内科であるとのことです。このように、呼吸器診療に対するニーズが大きく高まる中で、呼吸器内科医不足は全国的に深刻な状況にあります。このような中、学生教育、さらに初期研修医の教育に力を入れ、情熱を持って指導にあたることが、重要であると考えております。こうした努力が実りつつあり、当教室には全国からたくさんの入局者が集まるようになってきました。充実した研修プログラムにより優れた呼吸器専門医を育成し、診療、研究を充実させていくことで、神奈川県、ひいては日本の呼吸器診療のレベル向上に寄与したいと考えております。

本教室の講師以上は全員留学経験者で、大学院生や若手医師を指導しながら、基礎研究および臨床研究に取り組んでおります。研究においては、基礎と臨床研究をバランスよく行い、独創的で医学、医療の進歩に貢献できる研究を推進していきたいと思います。

横浜市立大学附属病院は、明治4年(1981年)に開設された日本で2番目に古い病院(院長の早矢仕有的は、丸善の創始者、ハヤシライスで有名)が前身であり、130年以上の長い歴史を経て今日に至っております。横浜は約160年前の開港以来、西洋文化を取り入れ新しい文化を築きながら発展し、わが国を代表する国際都市になりました。私たちの教室もこの伝統を継承しつつ、横浜から全国、そして世界に情報を発信し、呼吸器病学に新たな息吹をもたらしたいと考えております。

どうか皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

平成27年秋
主任教授 金子 猛

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