プロジェクトの概要
プロジェクトの概要
背景
日本の外国人登録者数は長期的には増加傾向ですが、受診環境には様々な問題があり、外国籍住民の受診抑制や健康格差の広がりが危惧されます。
私どものブラジル人対象の質問紙調査では、有効回答245人中精神障害リスク群が男性で3.9%、女性で13.6%、全体の5割強に受診経験があり、医療保険未加入者は5割、その中の4割が加入したいけど入れないと回答していました。また、ブラジル人対象のグループ・ディスカッションでは、ブラジル人にとっては、日本の地域医療は利用しづらく、不便であること、日本の医療保険制度に対して間違った認識があること、さらに、医療サービスを利用するときのにわか通訳者に関する課題が明らかになりました。
他方、静岡県西部7市の医師と薬剤師を対象にした外国人患者とのコミュニケーションに関する質問紙調査では、外国籍住民の医療ニーズがあるにも関わらず、外国人患者に対する診療環境は整備されていないため、言葉が通じないままの診療となってしまい、診療やコミュニケーションの質が日本人患者に比較して低くなっていることが明らかになりました。
このような背景の中、外国人患者が安心して医療サービスを受けられる、かつ、医療者が外国人患者に安全な医療サービスを安心して提供するための方策は、言葉のハンディキャップをなくすことが最優先課題としてあげられました。
そこで、外国籍住民が自ら地域で活動できる外国人医療通訳者としての人材を養成するために、医療通訳者に必要な能力を明確にした上で、医療通訳者養成研修プログラムを考案・実施し、プログラムの有効性を評価することにしました。最終的には、外国籍住民、医療機関、外国人医療に従事する専門家・関連団体とのディスカッションを通じて、外国籍住民を地域医療連携システムの一員として包含することを目指しています。
目的
- ブラジル人を対象に医療通訳者養成研修を実施します。
- 医療通訳者に必要なcompetence(能力)の構成要素とアウトカム指標を決定します。
- 研修前後におけるcompetence(能力)のアウトカム指標の変化を測定し、プロセス指標とあわせてプログラムの有効性を評価します。
- 研修プログラムの問題と改善案を検討します。
研究メンバー (順不同・敬称略)
研究代表者 | 濱井妙子 | 静岡県立大学看護学部・講師 |
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研究分担者 | 永田文子 | 国立看護大学校・講師 |
連携研究者 | 木村正人 | 静岡県立大学看護学部・教授 |
西川浩明 | 静岡県立大学看護学部・教授 | |
水野かほる | 静岡県立大学国際関係学部・准教授 | |
賀川義之 | 静岡県立大学薬学部・教授 | |
山田 浩 | 静岡県立大学薬学部・教授 | |
前野真由美 | 静岡県立大学短大部看護学科・講師 | |
研究協力者 | 山口貴司 | 山口ハート国際クリニック院長・浜松外国人医療援助会会長 |
井ノ上俊介 | 南山堂薬局小笠店・薬剤師 | |
今井友里ロージ | 在浜松ブラジル総領事館 | |
岩木エリーザ章子 | CREATIVOS 代表 | |
浜田エミリア | 上智大学公開学習センター語学講師 | |
デ・メロ・末岡良子 | ||
研究協力機関 | 山口ハート国際クリニック | |
在浜松ブラジル総領事館 | ||
公益財団法人 静岡県国際交流協会(SIR) | ||
公益財団法人 浜松国際交流協会(HICE) | ||
NPO法人 掛川国際交流センター(KIC) | ||
静岡県 |
研究の倫理的配慮
本研究は、静岡県立大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施しています。
科学研究補助金
本研究は、学術研究助成基金助成金(基盤研究(C)、課題番号2459063)の支援を受けています。