脳外科医 澤村豊のホームページ

様々な脳腫瘍や脳神経の病気について説明しています。

小児への放射線治療後に生じたこと

髄芽腫治療後17年目,放射線誘発血管腫からの脳幹部出血


1歳5ヶ月で左小脳半球の髄芽腫になり手術と化学療法して,3歳になってから脳脊髄照射をしました。脳脊髄18グレイ,局所48グレイが入っています。18歳の学生の時のMRIで,左小脳萎縮がありますが普通の生活ができています。

18歳の時に突然,左上下肢の痺れと脱力が生じました。延髄下端から脊髄に小さな出血があります。様子を見ていたら症状はよくなりました。


その後数日の間に,小さな出血を繰り返して,嚥下障害,しゃっくり,頭痛,四肢のしびれなどが出ました。手術をしないで経過を見ました。


7年後のMRIです。延髄脊髄移行部(おそらくC1)に出血痕が残っています。放射線誘発海綿状血管腫といわれるものの画像所見ですが,ほんとのところは静脈閉塞によるうっ血症状と鬱血性の出血といわれています。

症状はすべて良くなりました。今は学校を卒業して,元気に働いています。

全脳照射後の脳内石灰化(幼児例)

20年以上前のことですが,髄芽腫の1歳6ヶ月の子どもに25グレイの全脳照射をしました。これは15年後のCTです。
脳の萎縮は目立ちません。認知機能は低いのですが支援を受けて学校へ行けています。下垂体機能は低下して成長ホルモンなどの補充をして普通に暮らせています。
CTで,両側の大脳基底核(被殻と淡蒼球)と視床後部に石灰化がみられます。乳幼児期に放射線治療を受けた子どもに見られるものです。

全脳照射後の脳内石灰化(青年期例)

1985年,17才のときに松果体ジャーミノーマで全脳照射45グレイ,18分割,1回2.5グレイの放射線治療を受けました。照射後の数年は普通に社会復帰ができていたということで,大学を卒業し,就職もしていました。しかし,20代後半くらいから認知機能低下(高次脳機能障害)が目立つようになりました。41才で脳幹部梗塞になりましたが,放射線治療が原因の脳血管障害でした。大脳にも小脳にも広範囲に脳内石灰化が散らばっています(白い点状に見えるもの全て)。30代からさらに進行悪化しました。脳の萎縮は目立ちませんが,MRIでは,大脳基底核の多数のラクナ梗塞,多数の海綿状血管腫,中大脳動脈の壁不整と狭窄もみられました。45才で介護施設に入所しています。このような所見は,1日線量2.5グレイを用いていた頃の小児患者さんでみられます。

全脳照射後の頭蓋骨の部分的発育不全

2歳くらいで全脳照射を受けた子どもが15歳になりました。前頭骨だけの発育が悪くて額の間がとても狭くて,コメカミの凹みが目立つようになりました。両側の側頭部にチタンプレートを入れて額を広くして頭蓋形成をして,見栄えはとても良くなりました。このような手術を整容的頭蓋形成術といいます。

乳児の髄芽腫の治療後の硬膜血管腫

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生後8ヶ月で髄芽腫を発症して,手術後に8コースの化学療法して,残存腫瘍があったために2歳半で脳脊髄照射18グレイと後頭窩局所照射21.6グレイをしました。放射線治療後2年で見つかった左前頭部腫瘍です。てっきり脳表播種再発かと思いましたが,良性の硬膜血管腫でした。この子は20歳となり再発もなく元気です。幼児期の放射線治療あるいは化学療法は,予想より早期に,珍しい2次腫瘍を誘発することがあると考えたほうがいいのでしょう。この腫瘍の部位には1日線量1.8グレイで18グレイしか照射されていませんでした。

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