脳外科医 澤村豊のホームページ

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胎児性がん embryonal carcinoma

胎児性癌

embryonal carcinomaは,胎生初期のembryonic ectoderm(胎生外胚葉)のembryonic pluripotential stem cellが癌化した細胞配列に類似した組織形態をとる悪性腫瘍である。極めて稀に純粋な脳原発のembryonal carcinomaの報告があるが,中枢神経系においては睾丸に発生するような純粋なembryonal carcinomaの診断を得られることはほとんど無い。38神経組織に浸潤性増殖をし,出血や壊死像を含み多数の核分裂像を有し特徴的な細胞配列を示さないことも多く,immature teratomaの悪性型やchoriocarcinomaと混在した場合には判別しがたい。CK(cytokeratin),PLAP,AFP,HCGは,部分的に陽性所見を示すことがある。AFP強陽性の部分があれば,yolk sac tumorとの合併を考慮する。

松果体に発生することが多く,臨床経過は純粋なgerminomaやteratomaよりもかなり早い。MRI上境界明瞭な腫瘍で,石灰化を伴うこともあり,T1強調ガドリニウム増強像では強く増強されることが多い。注意すべき点は,MRIではgerminomaとの鑑別診断が極めて困難なことであろう。高率に髄液播種するので,embryonal carcinomaを疑ったときには必ず全脳脊髄を含むガドリニウム増強MRIを撮像する。髄液播種の出現と進行も早いので,治療経過中も脳から腰仙椎までを含むMRIを頻回に反復する必要がある。

日本脳腫瘍統計によれば,5年生存率は46%である。たとえ初回治療に成功して完全緩解を得たとしても高率に再発をきたし,原発部位周辺脳への直接浸潤と髄液を介した転移で致死的経過をたどることが多い。全脳脊髄を含む放射線治療と強力な化学療法を選択する必要がある。病勢の進行が早いので,放射線照射と化学療法は病理組織診断がつき次第早急に行う。手術のみでの治癒は期待できず,摘出術によって誘発される髄腔内播種には十分に留意する必要がある。また,放射線化学療法の後に摘出可能病変が残存する場合には再手術を計画した方がよい。

松果体部と視床下部に発生したmixed germ cell tumorの増強MRI

松果体部と視床下部に発生したmixed germ cell tumorの増強MRI(左側)。定位的生検術によりimmature teratomaとembryonal carcinomaの混じる病理像が認められた。1コースのICE化学療法と54Gyの放射線治療により腫瘍は著明に縮小し(中央),治療8ヶ月後には更に退縮している像が認められる(右側)。teratomaにおいて,放射線化学療法の後に腫瘍の完全消失を認めることはほとんどない。

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