脳外科医 澤村豊のホームページ

様々な脳腫瘍や脳神経の病気について説明しています。

顔面神経麻痺の時に自分でできること

大切なこと

  • しては良いことと,逆にいけないことがあります
  • 軽い麻痺はなにもしないでも良くなってしまうのでなにもしません,リハビリもしません

回復を助ける目的

顔面麻痺になると顔の筋肉(顔面表情筋)が動かないので痩せてしまいます(筋萎縮)。筋肉が痩せてなくなってしまうと神経が回復しても動きが回復しません。完全麻痺になって表情筋委縮が進むと神経再建手術をしても顔の緊張は戻りませんし動きも回復しません。完全麻痺になって1年から1年半くらいで後戻りしない表情筋委縮になるでしょう。

マッサージ

手の指先や手のひらを使って顔面の皮膚と筋肉を数分マッサージします。これは動かなくなった筋肉をほぐして堅くなるのを防ぐためと,筋肉に刺激を与えることによって萎縮することを防ぐためです。1日に数回して下さい。あまり広い範囲を同時にしない方がいいでしょう。

暖める

顔の筋肉の運動がなくなると,筋肉の血流が悪くなります。暖めたタオルを麻痺した側の顔にあてて血液循環をよくしましょう。お風呂に入ったときも麻痺した顔を暖めるようにします。

運動訓練

顔面の動きが戻り始めた時期から開始します。額にしわを寄せる,目を大きく開く,目を軽く閉じる,まばたきをする,イーと歯を見せる,口をへの字に曲げるなどの運動を鏡を見ながら行います。軽くゆっくり顔を動かして下さい。強く目を閉じたり,力一杯ほほをふくらませるなどの事は良くありません。

日常気をつけること

顔面の動きが戻り始めたときには,しゃべる時,食事をするとき,目を大きく開くように気をつけて下さい。目を閉じるときに,意識して口を動かさないようにしましょう。目と口が無意識に一緒に動いてしまう後遺症(神経の誤った再生によって生じます)を予防するためです。リハビリは,顔面全体を動かす刺激療法などはしません。目なら目だけ,口なら口だけをマッサージしたり動かしたりします。

後遺症(麻痺から半年以上してから)

回復した後に目と口が一緒に動いてしまう(病的共同運動

口をすぼめると目が閉じてしまうのが特徴的な症状です。神経が誤った場所に伸びて目と口を一緒に動かしてしまうこの減少を顔面筋の病的共同運動といいます。ひどいときにはボトックス注射で治します。

顔面のけいれん

顔面が勝手にヒクヒクうごくことです,これもひどいときにはボトックスで治療します。引きつった筋肉を延ばしてあげることも大切です。ほんとの顔面けいれんとは違って,小さな動きです。

目が乾く,涙が出過ぎる

顔面神経は涙腺からの涙の分泌を促して,唾液を出す機能もあります。回復しすぎると,食事の時に唾液の分泌と一緒に,涙がポロポロ出てしまうという症状が出ます。

高度の麻痺がある患者さん,してはいけないこと

高度の麻痺がある患者さんが,過度に顔面全体を同時にマッサージしすぎたり, 低周波や電気刺激で顔面の筋肉を無理に動かすと後遺症が重くなることがあります。病的共同運動が悪化する可能性があるのです。無理せず適度に,顔面の部分部分をマッサージするなどして下さい。

フライ症候群

  • 耳下腺手術時の合併症としてしられる病態です
  • 病的共同運動と同じ機序です
  • 顔面神経再建術の後でも起こります
  • 側頭部で異常な発汗が生じます
  • 顔面神経は耳下腺の分泌を調整する神経です
  • 顔面神経の末梢枝である耳介側頭神経が損傷されると,それが回復するときに耳下腺だけに神経再生が生じれば問題はありません
  • しかし,耳介前方あるいは側頭部,頬の皮膚の汗腺に余分な神経再生ができてしまうことによってフライ症候群が生じます
  • その部位から流れ落ちるように発汗してとても困ります
  • 治療は,発汗のある部位の余分な神経の働きを止めればいいので,ボトックス皮下注射を使用します

 

Copyright (C) 2006-2024 澤村 豊 All Rights Reserved.