頭蓋咽頭腫 放射線治療後の血管閉塞 radiation-induced moyamoya disease
- 放射線治療をすると,クラニオと一緒に,内頸動脈も被曝してしまいます
- リニアックなどで20回から30回くらいに細かく分けて(多分割)放射線治療をすると,5年後くらいから動脈狭窄が生じることがあります
- サイバーナイフやガンマナイフで1回から3回くらいで照射すると,2年後くらいから動脈が細くなってくることがあります
- 症状が無い無症候性で見つかることが多いです
- 血管撮影では,被爆した動脈の単なる狭窄や閉塞,あるいはモヤモヤ病(ウィリス動脈輪狭窄症)にみえます
- 症状が出る場合には,TIA 一過性脳虚血発作,てんかん発作,麻痺などを残す脳梗塞などが生じます
- 放射線治療を受ける年齢が低いほど,かなり確率が高くなって来ます
- 幼児の頭蓋咽頭腫に放射線治療をすると2割くらいで内頸動脈系の狭窄が生じると言われています
クラニオは鞍内や鞍上部という部位にできる腫瘍です。緑色に塗ったのが腫瘍,赤が動脈,青が静脈です。クラニオの周囲にはたくさんの動脈がありますが,特に内頸動脈と前大脳動脈が腫瘍に接していることが多いです。
小児のクラニオ:放射線治療後の内頸動脈閉塞と脳動脈瘤の発生
4歳の時に頭蓋咽頭腫に対して50グレイの分割照射を受けました。両側の内頸動脈と前交通動脈が被曝しています。16歳(12年後)に左片麻痺の虚血発作を生じました。右内頸動脈が閉塞してウィルス動脈輪閉塞(モヤモヤ病)になっていました。前交通動脈に動脈瘤(赤矢印)もできていました。小児の頭蓋咽頭腫への放射線治療ではかなり高率に閉塞性脳血管障害を生じるのですが,治療後10年以上がたってから起るので,治療を行った医師はそれをみることはほとんどありません。
小児のクラニオ:放射線治療後の脳梗塞
3歳の時に鞍上部クラニオに40グレイの放射線治療を受けました。31歳(28年後)で右前頭葉に脳梗塞を生じました。右内頸動脈と左前大脳動脈が閉塞したウィルス動脈輪閉塞症(モヤモヤ病)になっています。右の中硬膜動脈から右大脳に血流が入っています。
小児のクラニオ:放射線治療後の脳梗塞
5歳でガンマナイフ,8歳と10歳の時にサイバーナイフ治療を受けました。右内頸動脈が閉塞してウィルス動脈輪閉塞(モヤモヤ病)になりました。この画像は10歳時のものです。右中硬膜動脈から右の前頭葉と側頭葉に血流が入っていてモヤモヤ病の病態です。脳虚血発作や脳梗塞はない無症候性のものです。
ガンマナイフやサイバーナイフなどの高線量照射では,動脈閉塞は多分割照射よりも早く生じます。
文献
Lo AC, et al.: A Cross-Sectional Cohort Study of Cerebrovascular Disease and Late Effects After RadiationTherapy for Craniopharyngioma. Pediatr Blood Cancer. 2016
年齢中央値10歳,20人の頭蓋咽頭腫の患者さんが放射線治療を受けて,5人(20%)に脳卒中 strokeが生じたとのことです。放射線治療後9年ほどで発症しています。