脳外科医 澤村豊のホームページ

様々な脳腫瘍や脳神経の病気について説明しています。

頭蓋咽頭腫の症例 クラニオ

クラニオと視床下部,視索の浮腫

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成人ののう胞性頭蓋咽頭腫 cystic craniopharyngioma です。腫瘍の周囲の視床下部に浮腫があります。右視索から内包への浮腫も顕著でした。このために認知機能障害で発症しました。この視床下部性の認知機能障害は可逆的で,手術で視床下部損傷をしないように腫瘍摘出すると認知機能は正常に戻ります。

放射線治療後のクラニオの悪性化

craniomalignant2005年大学病院で摘出を受けて術後にガンマナイフしました。2009年に再発して,子ども病院で摘出を受け術後にサイバーナイフをしました。2度の高線量定位照射が入っていました。2010年に2度目の再発を見て,私のところへ来ました。海綿静脈洞から蝶形骨洞,頭蓋内に激しい再発がありましたが,頭蓋底外科手術で全摘出しました。病理は悪性度が高いガン (ameloblastic carcinoma) になっていました。左のMRIはさらに1年後3回目の再発のものです。

子どもの頭蓋咽頭腫にガンマナイフやサイバーナイフの治療を行えば,腫瘍の悪性化が生じることは知られています。

幼児の巨大なクラニオ

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高度の視力低下で発症した3歳児のクラニオです。脳室ドレナージがされていました。当然ですが,内視鏡による穿破でのう胞を縮小させて,残存視力の温存を試みます。それから開頭手術 bilateral subfrontal-interhemispheric approach で全摘出です。顔面神経にも腫瘍壁は癒着していましたが,何が何でも全摘しないと放射線治療になってしまうので頑張ります。この子は開頭術後に下垂体柄のところに小さな再発を生じて,経鼻的内視鏡手術でまた全摘出しています。
幼児の巨大な頭蓋咽頭腫は,リスクととらずに中途半端な部分摘出すれば,数回以上の開頭手術,放射線治療の泥沼になります。

症状がなくて偶然発見されたものでは下垂体機能を残せます:鞍隔膜下タイプ

4歳の少年に偶然発見されたものです。CTで石灰化があり,ガドリニウムで斑らに増強されるもので下垂体後葉の高信号は残っていました。

経鼻手術で全摘出しました。beta-akatenin陽性のadamantinomatous typeで,MIB-1は3%程度です。

尿崩症もなく手術後の下垂体機能は正常に保たれていました。
でも後葉との剥離などでは無理をしていませんから,もしかすると再発するかもしれません。その時はまた経鼻手術で全摘出すればいいのです。このケースでは下垂体機能温存が完全摘出より優先されます。なぜなら再手術になっても結果的には治せるから。

経鼻内視鏡ではなく,開頭手術の方が下垂体機能を守れる例

両耳側半盲のみで発症した鞍隔膜下タイプです。下垂体柄は前方左側にあります。腫瘍は鞍内後方にもあり,強い骨化を伴うものでした。これを経鼻内視鏡手術で全摘出すれば前葉損傷は避けられませあん。


術直後のMRIです。右前頭側頭開頭で鞍内のものも含めて全摘出しました。下垂体柄は長く伸びて扁平化して薄く腫瘍の左後面に張り付いていました。それを削ぎ落とすようにして下垂体柄を残しました。
術後14年再発はありません。とても軽い尿崩症を残しましたが,前葉機能は正常に温存できました。

鞍内にあった部分の病理所見です。adamantinoomatous typeで,破骨細胞を伴う強い骨化がみられます。


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