中枢神経の特殊なリンパ腫 CNS lymphoma

脳神経にできるリンパ腫ですが,通常のPCNSLとはMRI画像も異なり,治療法も異なるものです

眼内リンパ腫の合併(intraocular lymphoma, IOL)

  • 片眼の比較的に急速な視力低下で発症し,ぶどう膜炎 uveitisと類似した症状であるので,ぶどう膜炎と診断されることが多いです
  • 原発性眼内リンパ腫 PIOL primary intraocular lymphoma はPCNSLの一部分症として認知されているので,眼内リンパ腫があっても全身のリンパ腫とはせず,PCNSLと診断します
  • ステロイド治療で寛解が得られることがあり,眼内生検手術をされていない場合には確定診断がつかないまま,ぶどう膜炎の既往として残るのみであるので,PCNSLの患者さんの病歴をとっていると,ぶどう膜炎と言われたというような訴えを聞くこともあります
  • また脳病変と同時に進行することも多いし,合併頻度が高いのでPCNSLを疑う場合には眼科での検査も必要です
  • 孤発性のPIOLならば眼内局所療法(制がん剤注入 intravitreal methotrexate,局所放射線治療 ocular radiotherapy)など特有の治療法があります
  • 脳病変と合併する場合にはまずはPCNSLに準じた治療法をします
  • Grimmらの眼内病変を合併した221例のPCNSLの報告では,眼内単独で再発が生じる場合は20%で,眼内病変への局所治療を加えた場合に局所制御率はよいが,全生存割合 OS は局所治療を加えない群との差がないとされています

硬膜のリンパ腫:MALT lymphoma of the dura モルト・リンパ腫

  • 硬膜から発生するリンパ腫が知られています
  • 成人女性に多い傾向があります,男性の5倍
  • 浸潤性の髄膜腫ガンの硬膜転移と誤診されるような画像所見です
  • 硬膜の肥厚 plaque のみが初見のこともあります
  • 主として硬膜下に腫瘤形成します
  • 周辺脳組織に浸潤して,脳浮腫所見を伴います
  • MALTリンパ腫 (marginal zone lymphoma) がほとんどで,B細胞リンパ腫はまれです
  • 脳のPCNSLよりは,比較的にゆっくり大きくなるリンパ腫です
  • MIB-1 indexは5%以下が多いです,非定型髄膜腫 grade II より低いくらいです
  • 腫瘍部分摘出/生検術と局所放射線治療だけで,5年無増悪生存割合が80%以上となる予後の良いリンパ腫です
  • 放射線治療も低線量で治癒が期待できるという報告もあります
  • 他の臓器での再発例はありますが,硬膜リンパ腫には無理な化学療法や全脳照射はしません

血管内リンパ腫 : IVL intravasclar large B-cell lymphoma

  • リンパ腫細胞が血管の内部で増える血液腫瘍です
  • IVLの患者さんの8割くらいに脳病変が生じます
  • そのため,脳血管閉塞が生じて,脳梗塞で発症します
  • 拡散強調画像 DWIで高信号となります
  • 初発では脳梗塞と誤診されることがほとんどです
  • もしくは浮腫性変化が強いもので,亜急性脳炎 subacute encephalopathyに類似します
  • 一度収縮して治っても,また違った部位に再燃します
  • 病理診断は,リンパ腫のいる血管を採取しないと確定に至りません
  • ですから,生検術で証明できないことがあります
  • 血管内に,large atypical B-cellsが増殖します
  • 治療はPCNSLに準じるものです
  • R-CHOP とMTX, cytarabine, prednisoloneの髄注,血管内ヘパリン投与の併用(血管閉塞予防)などの報告があります
皮膚病変で診断されていた患者さんの同時多発性脳病変


60代女性で,皮膚結節がB cell lymphoma (neoplastic angioendotheliosis)がありました。1年後に急性の認知機能障害と歩行障害がありMRIで発見されたものです。SPECT, PET検査では多発性虚血性病変です。生検手術でIVLの診断が得られました。


左は発症時,右はCHOP化学療法1コース後のT2強調画像です。化学療法で寛解しました。

リンパ腫様肉芽腫症 : LYG lymphomatoid granulomatosis
ALPD angiocentric lymphoproliferative disorder

  • 滲む様にガドリニウム増強される病変です
  • 周囲に脳浮腫を伴い,髄膜浸潤がみられ,mass effectを有する様な病変では内部に壊死像を伴います
  • 単発のことが多いのですが,多発性脳病変となることもあります
  • diffuse large B-cell lymphomaとされています
  • 肺に最も多くて,次いで中枢神経,腎臓,皮膚,肝臓などに多発します
  • 両側の肺に結節と浸潤像が見られます
  • 血管中心性 angiocentric,血管破壊性 angiodestructive に異型細胞が浸潤します
  • 免疫不全の患者さんに多いです
  • 原因として,Epstein Bar virus感染が疑われています
  • 予後が良いものと不良なものがあります
  • 単発性のものでは自然寛解するものもあります
多発散財性病変例


50代男性,痙性四肢麻痺による歩行障害で発症しました。多数の散財性病変を呈するタイプです。

単発・再発例


既往に両肺野,皮膚病変があった50代女性が,右片麻痺と小脳失調で発症しました。確定診断のために生検手術をしました。

血管壁を破壊し,脳実質内に浸潤像が見られます。

左から順に,L26, UCHL-1, CD69-KP-1染色です。


脳幹部病変は局所照射で消失しましたが,2年後に右頭頂部に再発しました。

 

文献
  • de la Fuente MI: Marginal zone dural lymphoma: the Memorial Sloan Kettering Cancer Center and University of Miami experiences. Leuk Lymphoma. 2017
  • Grimm SA, et al.: Primary CNS lymphoma with intraocular ivolvement: International PCNSL Collaborative Group Report. Neurology 71, 2008
  • Katzenstein AL, et al: Lymphomatoid granulomatosis: insights gained over 4 decades. Am J Surg Pathol. 2010
  • Nizamutdinov D, et al.: Intravascular Lymphoma in the CNS: Options for Treatment. Curr Treat Options Neurol. 2017
  • Puri DR: Low-dose and limited-volume radiotherapy alone for primary dural marginal zone lymphoma: treatment approach and review of published data. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008

 

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