必要性を見せる
7/27 7.活動の必要性を見せる技術【展開方法】
【テロップ】
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【ノート】
では、「活動の必要性を見せる技術」を構成する「価値を見せる」、「資源を見せる」、そして「エビデンスを見せる」技術のポイントを見ていきましょう。 まず「価値を見せる」技術についてです。 先ほど紹介した後ろ向きの状態の特徴によって3つの段階を設けています。 一つ目は、どうしてその活動を始めなくてはならないのか、そんなに大した問題ではないのではないかといったまだ事態をよく知らない状態の対象に、適切な資料や媒体で見せて知識を提供する技術です。 見せる内容には、4つのポイントがあります。それは、「人々への広がり」、「問題の深刻さ」、「事態の緊急性」、「健康の格差や不平等」です。 見せ方には、その地域の実態を、他の地域と比べる、経年的に比べる、平常時と比べる、などデータを比較して見せる方法と、事例の実際の様子を説明して見せる方法があります。 二つ目は、活動の必要性はわかるけれども、自分には関係のないことだから、それに自分は何も困らないし、他のことで忙しくて今はそれどころではないといった関心が向かない状態の対象に、活動への動機を高めてもらうために、見せる技術です。 見せる内容は、対象の状態に応じて判断します。対象の状態とは、対象が、その活動をどの程度重要と思っているか、対象に、これならできる・その自信が持てるという自己効力感があるか、対象のやるべきことの中でその活動の優先度がどの程度か、です。 状況依存性が高いことなので、画一的な答えはありませんが、重要度や優先度を高めるためには、その健康課題を放置すれば将来どのような事態になるか、それは望む将来とどの程度のギャップがあるかを見せます。自己効力感を高めるには、資源やエビデンスを用いてどの程度解決・改善できる可能性があるか、ということを資料や媒体を用いて説明するのが効果的と言われています。 三つ目は、コトの重大性はわかるけれども、なにも私でなくても誰かがやればいい、予算もないのにこのままで十分だろうといった状態の対象に、行動を起こす責任感を高めるために見せる技術です。 知識を得て活動の必要性を実感し、やらねばという動機が高まれば、行動を起こす準備は整ったことになります。次に確認したいのが意思決定に向けた責任感です。活動を始める、あるいは改善する意思決定をすることは、その後の活動の実施と、その成果に責任を持つということであり、その重圧が意思決定を鈍らせる場合もあるでしょう。このような場合は、対象に行政の責任を示す法律や、住民の努力義務を謳う法律、あるいは専門職の倫理要領などを見せることによって、それぞれがやるべきことの理解を深め、責任の所在を再確認することが必要でしょう。 次は、「資源を見せる」技術についてです。 これは、自分には何もできないし、この地域ではきっと無理と思っている状態の対象に、活動の開始あるいは改善の実現可能性を高める資源を見せて、実現に向けた戦略の提案につなぐ技術です。 地域の社会資源を包括的に把握し、やろうとしている活動の推進に役に立つ資源を示し、どのように活用できるかを説明します。 また、どんな人も何らかの力量を持った資源であることを説明します。保健師は、本人が自分の力量に気づくよう働きかけ、主体的にその能力を活用することを促します。 最後に「エビデンスを見せる」技術についてです。 これは、どうしていいか分からない、とてもうまくいくとは思えないという状態の対象に、健康課題を解決・改善できる可能性を高めるエビデンス、つまり根拠を見せて、戦略の提案につなぐ技術です。 文献検討から先行研究の知見を収集し、効果が検証された事業展開の方法や内容、及び効果的な実施や評価に使える道具を見せること、さらに、それらの活用によって期待される成果の予測を見せることによって、対象の意思決定を確実にしていきます。 エビデンスを収集するには、実践現場単独ではなく、大学との協同も視野に入れた動きが必要です。