鞍結節部髄膜腫(メニンジオーマ)のまとめ

髄膜腫は脳を覆う膜に由来する良性の脳腫瘍です。
鞍結節部の髄膜腫では視神経を圧迫することで視力・視野障害がおきます。
治療は手術による摘出が第一選択です。小さなもので、無症状であれば経過観察となりますが、大きくなると手術が難しくなるためしっかりとしたMRI画像で経過を追う必要があります。

髄膜腫は脳腫瘍の中で最も多い腫瘍の一つです。基本的に良性のものが多く、基本的にガンの様に転移などはしません。
しかしながら、腫瘍なので徐々に大きくなり、周辺の脳組織を圧排して症状を出します。
内視鏡治療の対象となるのは現在のところ鞍結節部髄膜腫、斜台部の髄膜腫、脳室内髄膜腫です。

このページでは鞍結節部髄膜腫についてご紹介いたします。

鞍結節部髄膜腫の特徴・症状

髄膜腫は昨今の脳ドックの発展に伴い、小さいサイズでも発見されることが増えてきました。無症状のものであれば基本的には経過観察とすることが多いですが、腫瘍が増大することで、周辺にある脳組織を圧排し、頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状がでたり、場所によっては麻痺、視野障害などを引き起こしたりします。症状が出ているものでは髄膜腫の存在部位に合わせて適切な手術治療を選択する必要があります。
このうち鞍結節部髄膜腫では視神経を圧排することで視野障害の原因となります。鞍結節髄膜腫では下垂体腫瘍と比較しても急激に症状がすすむことがありますので、ある程度のサイズになったら治療を考慮したほうが良いと思われます。

鞍結節部髄膜腫の治療法

この部位の髄膜腫の摘出は、脳の中心部であることから難易度は高いです。
開頭で手術を行った場合には脳をわけて腫瘍までたどり着く必要がありますが、経鼻であれば脳を触ることなく病変部に到達することができます。
腫瘍は硬膜側からの血液の供給を受けていますが、経鼻手術では腫瘍を露出する前に硬膜を大きく露出させ、これらの血管を処理することが可能です。このため、いざ頭蓋内に侵入し腫瘍を摘出する際にはほとんど出血することなく腫瘍の内減圧を行うことができ、術中の出血を大きく抑えることができます。
また腫瘍は視神経の下に位置していますが、開頭では視神経を持ち上げて摘出する必要がありますが、経鼻では視神経を圧排することなく摘出操作を終えることも可能です。

鞍結節部髄膜腫に対する内視鏡下経蝶形骨手術の限界

上記のように鞍結節部髄膜腫に対して内視鏡下経蝶形骨手術は脳を触らない、視神経の圧迫を最小限にすることができる、出血を抑えることができるなどの大きなメリットがありますが、この手術にも限界、デメリットがあります。

  • 内視鏡下経蝶形骨手術の限界
    頭の中心部にある病気に対して非常に有効な治療法ですが、外側に大きく張り出すような腫瘍に対してはその有効性が劣ります。外側進展の強いものに対して無理にこの手術法を適応することで逆に手術の危険性を上げてしまうこともありますので、しっかりと適応を検討する必要があります。
    上方に大きなもの、硬いものについても適応は慎重に考えています。4cm以下のものが良い適応と考えています。
  • 内視鏡下経蝶形骨手術のデメリット
    髄膜腫では発生源付近の硬膜という膜を切り取る必要があります。経鼻手術でももちろんこの硬膜を切り取りますが、切り取った硬膜を別のもので作り直す必要があります。この時腹部の筋肉の膜を利用することが多く、腹部に約4cmの皮膚切開が必要です。頭の手術で頭には傷がつきませんが、小さいながらもお腹に傷がつきます。また髄液漏という頭の中の水が鼻から抜けてきてしまう合併症が起こり得ます。名古屋大学では可能な限りこの発生率を抑えるため、鼻の奥で硬膜と筋膜を密に縫い合わせる様にしており(他では信じられないほど縫います)、これにより髄膜腫でも髄液漏の発生率をかなり抑えることに成功しています(これまで20例ほどの手術を経験しておりますが、残念ながら1例で髄液漏を認めましたので0%とは言えなくなってしまいました。)

名古屋大学での髄膜腫治療への取り組み

髄膜腫治療の基本は手術治療です。完全に摘出することで再発率を抑えることができます。脳表面にできる円蓋部髄膜腫であれば、難易度はともかく、開頭を行い脳を損傷しないように摘出するしかありません。しかし脳深部にできる鞍結節部髄膜腫や斜台部髄膜腫についてはどのようにその位置までたどりつくのかも重要です。
腫瘍がどのような位置で、どのような神経に癒着しているのか十分に議論を行い、頭蓋底グループ、腫瘍グループと連携を取りながら最善の手術方法を選択致します。

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