プロラクチン産生腫瘍
下垂体腺腫のうちプロラクチンを作る腫瘍です。
症状は女性では無月経や乳汁分泌、男性では非機能性下垂体腺腫と同じく視野障害です。
治療はカベルゴリンという薬の内服が第一選択です(週1~2回の内服です)。
下垂体腫瘍のうちプロラクチンというホルモンを作ってしまう腫瘍のことプロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)といいます。
プロラクチン産生下垂体腺腫の概要、症状
この腫瘍は女性に発生した場合、生理不順(月経不順)を引き起こします。このため、患者さんは産婦人科など、脳外科以外の科に受診されることが多いです。生理不順の原因を調べるための採血を行いプロラクチンが高いことが判明、MRIなどが撮影され診断に至ります。
男性に発生した場合には、PRLが高くてもあまり症状が出ないため発見が遅れます。このため比較的大きなマクロアデノーマとして発見されます。この時の症状として多いのが、非機能性下垂体腺腫と同様に視力視野障害です。
プロラクチン産生下垂体腺腫の治療
この腫瘍は他の下垂体腫瘍と違い、飲み薬で治療可能な可能性が高いです。腫瘍を治すというと抗癌剤のような薬を思い浮かべられると思いますが、それほど強い薬ではありません。
パーキンソン病の治療にも用いられる薬であるドーパミン作動薬という種類の薬を少量使用します。量はそれぞれの症例に応じて変更します。
週に一回ないし二回程度内服するだけで改善する可能性があり、現在はこれが第一選択となっております。効果は比較的早く現れ、非常に有効な治療です。
内服治療の欠点としては長期間の服用が必要な点のみです。適当にやめてしまうと再発する可能性があるため、医師の指示に従いしっかりと継続する必要があります(数年〜数十年)。
下のMRIはPRL産生腫瘍のMRIです。左図では1.5cm程度の腫瘍が見られています。右図はカベルゴリンを週2回内服、3ヶ月後のMRIです。腫瘍がかなり縮小していることがわかります。プロラクチン値は正常化し、月経も再開されました。
このようにプロラクチン産生下垂体腺腫は内服薬が非常によく効きます。このため手術治療は
・内服薬が副作用で使えない時
・内服薬が効かない時
・神経の圧迫症状が強く、失明の危険性が高い時(下垂体卒中などで緊急性が高い時)
などに限定されます。視野障害(目が見難くなること)を起こすような大きな腫瘍であっても、失明する危険性があるほどのものでなければ内服薬を使うことですみやかに小さくなり症状が改善する可能性があります。
注意点としてはプロラクチンなどのホルモンを産生しないような非機能性下垂体腺腫であってもプロラクチン値は軽度上昇することがあります。この場合内服治療を行ってもプロラクチン値は下がりますが、腫瘍は小さくなりませんので視野障害が進行する恐れがあります。脳外科医でも専門家でない場合間違えることがありますので注意が必要です。
主治医の先生と相談し治療法を十分に検討してください。