非機能性下垂体腺腫のまとめ

下垂体にできた良性の腫瘍です。
症状は視力、視野障害がメインですが、その他下垂体機能低下や複視を起こすことがあります。
症状がなければ経過観察とすることが多いです。
治療は鼻からの内視鏡治療が有効です(経蝶形骨手術)。
この手術では巨大なものを除き脳を触りません。

非機能性下垂体腺腫よくあるQ&A

Q:ほっておいたらどうなりますか?
A:良性腫瘍ですが、増大する可能性があるものです。症状がなくても定期的に(半年~年に一回)検査しましょう。

Q:生活で注意すべきことはありますか?
A:視野障害などの症状がなければ特に注意しなくても大丈夫です。

Q:食事で気をつけることはありますか?
A:~を食べると小さくなるとか大きくなるというものではありません。気にしなくてもよいです。

Q:薬でなんとかなりませんか?
A:残念ながら有効な薬物治療はありません。手術治療が基本となります。

下垂体腺腫とは下垂体前葉細胞(成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモンなど様々なホルモンを分泌する細胞)から発生する良性腫瘍です。下垂体腺腫は日本では原発性脳腫瘍のうち第3位を占めており、比較的よくみられる腫瘍の1つです。40-50代くらいの年齢層に多く、男性よりも女性に発生しやすい特徴があります。

下垂体腺腫は大きく分けて、非機能性下垂体腺腫(腺腫自体がホルモンを産生・分泌しない腫瘍)と機能性下垂体腺腫(腺腫自体がホルモンを産生・分泌する腫瘍)とに分けられます。非機能性下垂体腺腫と機能性下垂体腺腫では症状、治療方針が異なります。

○非機能性下垂体腺腫

非機能性下垂体腺腫とは下垂体腺腫のうち、腫瘍細胞から何か臨床症状を来すようなホルモンの産生・分泌を認めない腫瘍のことです。ですから腫瘍による周囲の組織圧排による症状が主な症状となります。

具体的には下垂体上方にある視神経を圧迫して視野視力障害を来すことがあります。典型的には両耳側半盲(視野のなかで耳側(外側)の視野が欠けて見えなくなる)を来します。さらに症状が悪化すれば視野欠損の範囲が広がり、視力を失うこともあります。また頭痛もよくみられる症状の1つです。稀ですが、下垂体の両側には眼球運動をつかさどる神経も走行していますので、腫瘍による圧迫が出現すると眼の運動が悪くなり、複視(物が二重に見える)が出現することもあります。

非機能性下垂体腺腫の治療方法、治療方針

非機能性下垂体腺腫は最近脳ドックなどの発展により、小さいサイズで見つかることも増えています。小さいサイズで症状を出していないものであれば経過観察(定期的にMRIでフォローを行い、腫瘍が大きくならないか確認していく)という方針をとります。
大きなもの、すでに視野障害などの症状を出しているものに関しては手術治療が必要になります。基本的には手術による腫瘍の摘出が必要です(経蝶形骨手術)。その他の治療法としては放射線治療も挙げられますが、基本的に放射線治療が下垂体腺腫の第一治療となることはなく、手術でどうしても取りきれない場所にある残存腫瘍に対してのみ行われることが普通です。非機能性下垂体腺腫に対して有効な薬物治療もありません。