下垂体腫瘍(下垂体腺腫)とは

下垂体腫瘍は下垂体組織にできる良性の腫瘍です。ホルモンを分泌する器官である下垂体から発生し、腫瘍によってはホルモンを過剰産生することがあります。この分泌するホルモンによって種類分けがなされ、成長ホルモン産生腫瘍、クッシング病、TSH産生腫瘍などなど様々です。治療法には手術治療、薬物治療、放射線治療があります。腫瘍の種類は採血検査で予測ができます。分泌するホルモンに応じた治療法を選択します。

下垂体腫瘍の概要

  • 下垂体というホルモンを分泌する組織から出た腫瘍を下垂体腫瘍もしくは下垂体腺腫といいます。
  • トルコ鞍部にできる腫瘍で、ほとんどは良性腫瘍です。
  • 下垂体腫瘍のうち、ホルモンを産生しないものを非機能性下垂体腺腫といいます。
  • 下垂体腫瘍のおよそ半数が非機能性下垂体腺腫であると言われています。(厳密には病理組織にて何らかのホルモンを産生していることもありますので、”臨床的に”非機能性下垂体腺腫ではありますが、これはまた別のお話です。)

正常下垂体の位置を表示する画像

下垂体の位置を示しています。腫瘍が大きくなることで近くに存在する視神経を圧迫し視野障害の原因となりえます。

非機能性下垂体腺腫では腫瘍が大きくなることによって周辺にある神経を圧迫し症状を出します。主な症状は腫瘍の上(脳側)にある視神経を圧迫することによる視野障害(物が見にくくなる。見える範囲が狭くなる。)です。

下垂体腫瘍の種類

下垂体腺腫はホルモンを産生する下垂体組織から発生した腫瘍です。腫瘍は元の下垂体組織が増生したものですので、元となった下垂体細胞によってはホルモンを余分に産生してしまう腫瘍であることもあります。産生するホルモンによって腫瘍の種類を分けています。

非機能性下垂体腺腫・・・ホルモンの分泌のない、もしくは分泌していたとしても少量で臨床的にそれがわからない下垂体腫瘍です。
成長ホルモン産生下垂体腺腫
・・・成長ホルモンを産生する下垂体腫瘍です。
プロラクチン産生下垂体腺腫・・・プロラクチンを産生する下垂体腫瘍です。
TSH産生下垂体腺腫・・・TSHという甲状腺を刺激するホルモンを産生する下垂体腫瘍です。
ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病)・・・ACTHという副腎を刺激するホルモンを産生する下垂体腫瘍です。クッシング病とも言われます。
FSH・LH産生下垂体腺腫・・・性腺ホルモンであるFSHやLHを産生する下垂体腫瘍です。無症状であることが多く、非機能性下垂体腺腫として治療されることが多いです。

これらの下垂体腫瘍はそれぞれ大きな特徴がありますので、ページを分けてご紹介いたします。

下垂体腫瘍が見つかったらどうするか?

近年脳ドックなどの普及にともなって自覚症状のない状態でも下垂体腫瘍の発見されることが増えています。
自覚症状がなくても、視野検査を行ったら異常が見つかることもありますし、ホルモンの異常などがあることもありますので、放置せずに専門医の診察を受けるべきと思います。

下垂体腺腫の中にはホルモンを作ってしまう機能性下垂体腺腫があります。機能性下垂体腺腫の場合にはホルモン過剰に伴う全身的な合併症を引き起こすこともありますので、より慎重な診療が必要になります。機能性下垂体腺腫が疑われる場合には内分泌内科と連携し、詳しい検査を行ったうえでしっかりとした治療を行う必要があります。

ホルモン異常がなく、視野検査でも異常のない下垂体腺腫の場合には経過観察とさせていただくことが多いです。大きさが大きくても神経異常などをきたしにくい下垂体腺腫(例えば鼻腔方向に突出するような下垂体腺腫)は手術を行わず経過観察とさせていただいています。

下垂体腫瘍の治療方法(手術方法)

前述の通り、症状を出していない、ホルモン異常も認めない下垂体腺腫は基本的に経過観察(年に1〜2回のMRI検査)をおすすめしています。
視野障害などの症状を呈している、ホルモンの異常を呈している下垂体腫瘍が治療の対象となり、その治療の主軸は手術治療です。下垂体腺腫の種類、状態によっては薬物治療で根治できたり、手術前に薬物治療を先行させたほうが良い場合もありますので、十分に検討を行う必要があります。

下垂体は、上の図のように通常の開頭手術では脳をかなり分けていかないとたどりつけない脳の深い場所に存在します。経鼻手術が開発され、鼻を経由して手術することで脳に触れることなくこの部分の腫瘍の摘出が行えるようになりました。近年では内視鏡を用いることでより確実な摘出が行えるようになってきています。経蝶形骨手術についてのまとめを記載しておりますのでこちらもご参照ください。