海綿状血管腫 に対する内視鏡手術論文
今回の報告の概要
海綿状血管腫に対する低侵襲な内視鏡治療について医学雑誌に論文報告を行いました。
新たな治療法として非常に重要な報告と考えられ、今後日本国内でも拡大していくことが期待されます。
論文について
海綿状血管腫に対する治療はこれまで顕微鏡を用いた開頭術が多く施行されてきました。
歴史のある非常に有効な治療法である一方で、比較的大きな皮膚の切開や開頭が必要で、体に与える負担が大きい点が問題でした。
海綿状血管腫は脳の内部に存在していますので、摘出の際には表面から海綿状血管腫までの脳を切開して到達する必要があります。従来の顕微鏡手術では比較的大きな脳の切開が必要でした。
今回報告した内視鏡を用いた海綿状血管腫治療
・内視鏡は狭い開頭からでも深部を非常にクリアに観察可能です。
・これまで内視鏡は水頭症や経鼻手術など、空間の存在する部分に利用されてきました。(水頭症→脳室、経鼻手術→鼻腔など。)
・脳の実質内にはもちろん空間はありませんが、代わりに円筒形の筒を病変に挿入し、その内部で治療を行うという手技で近年欧米を中心に広がりを見せています。
・使用する筒のサイズは直径6mmあるいは10mmのものを利用します。この径ですと外部からの視野確保はほぼ不可能であり内視鏡が必須です。顕微鏡手術では通常この倍程度の脳の圧排が必要です。
・海綿状血管腫は脳と病変との境界が明瞭で、内側からの視野だけでも十分に対応可能です。
・一度海綿状血管腫の中に筒を挿入してしまえば、操作は筒の内で完結しますので、周りの脳の損傷を抑えられます。
・摘出後に空間を水で満たすと術野が大きく広がるので、全体の観察が可能になります。
・水中下での視野確保は内視鏡でなくては得られないものです。
・水中で観察することで、完全な止血の確認や病変の取り残しを確認するのに有効です。
本報告の結論
・内視鏡を用いた海綿状血管腫治療は安全かつ有効と考えられます。
・特に内視鏡手術の特徴である水中下手術は脳の中の観察に優れている上に、術中に遭遇する出血に有効でした。
この手術方法についてActa neurochirurgica誌に掲載されました。
海綿状血管腫については別ページにまとめてありますので、こちらもご参照ください。
Takeuchi K, Nagata Y, Tanahashi K, et al. Efficacy and safety of the endoscopic “wet-field” technique for removal of supratentorial cavernous malformations. Acta Neurochir (Wien). 2022;164(10):2587-2594.