心腎連関の新しいメカニズム

 我が国では心不全は増加し続けており、新しい治療法の開発が望まれています。腎臓機能の低下(慢性腎臓病)は心臓病を増やしたり、悪化させます。逆に心臓病は腎臓病を悪化させます。そのため、心臓病と腎臓病がいろいろなメカニズムでお互いに関連し合っていると考えられています(心腎連関)。今回、心臓ー脳ー腎臓をつなぐ新しい臓器の連結機構(ネットワーク)を見いだしました。この臓器ネットワークは、心臓をストレスから守る重要なメカニズムです。実際、このネットワークがうまく働かないようにすると、マウスは心不全を発症するようになります。

__心臓−脳−腎臓が連携して心臓ストレスを適切に処理する__
心臓−脳−腎臓が連携して心臓ストレスを適切に処理する
 心臓を守る臓器ネットワークは、神経と腎臓由来の生理活性分子(コロニー刺激因子2)によってつながっていることを見いだしました。心臓では、免疫細胞の一種であるマクロファージが大事で、心筋細胞の働きを助けるタンパク質アンフィレグリンAmphiregulinを提供して心臓の機能を維持していることを発見しました。アンフィレグリンを働かせなくしたマウスは心不全になりやすく、また心不全を発症したマウスにアンフィレグリンを投与することで心不全を改善させることに成功しました。心臓ー脳ー腎臓をつなぐメカニズムは新しい心不全や慢性腎臓病の治療法の開発へ結びつくことが期待されます。
__Amphiregulinによる心臓保護__
Amphiregulinによる心臓保護
Fujiu et al. Nat Med 2017