熊本大学小児科は、1897年に私立熊本医学校として始まり、100年をはるかに越える歴史を持ちます。専門領域として新生児、小児救急集中治療、先天代謝異常、内分泌、血液、腫瘍、免疫、腎・泌尿器、神経・筋、循環器、膠原病・リウマチ、消化器、遺伝、思春期など、多くの分野の診療をおこなっており、同時に高い専門性を持つ医療に取り組んできました。熊本大学小児科で研鑽を積んだ医師は、熊本県のみならず、全国の大学、研究所、病院、自治体などで、教授、部長、所長、スタッフなどとして活躍しています。同門会員は400名以上、医局員も約170名にのぼる、地方大学の枠を超えたアクティビティを保っています。
私たちは2016年に熊本地震を経験しました。熊本県内の医療は大きな被害を受け、特に新生児医療や小児循環器医療などへの影響は長期にわたりました。その中で、これまで培ってきた協力体制と信頼関係が基礎となり、小児医療はいち早く立て直しが進みました。困難な中でも研究や専門医の育成は進み、英文論文数は震災後に倍増しました。関連病院のつながりも深まり、海外も含めて、診療、研究、教育などのさまざまな交流が継続しています。
熊本の小児医療では連携施設や関連施設が役割を分担し、小児科の幅広い分野を担っています。それぞれの施設が得意な専門領域を持ち、施設間で患者を紹介しながら診療をおこなっています。そのため研修施設ごとに特色があり、小児科専攻医はこれらの施設をローテートすることで、経験すべき疾患を研修することができます。また、夜間小児救急医療に開業医が参加する診療体制によって、連携施設、関連施設では2~3次医療に集中し、高度な専門医療をおこなうことができます。小児在宅医療、児童・思春期精神医療などでは、開業医が加わった診療体制が構築されています。さらに、多彩で実際的な教育プログラムによって、多くの専門領域を学ぶ機会があり、専攻医はリモートも含めてどの勉強会にも自由に参加できます。NEJMのケースレポート抄読会や研究志向の抄読会などにも多くの専攻医が参加しています。私は大学の使命である診療、研究、教育に全力で取り組み、新しい小児科学を担う人材を一人でも多く育てたいと考えています。私たちの小児科にはさまざまな個性を持った医師が集い、得意な能力を生かして活躍をしています。小児科に興味を持つ医師、医学生が私たちの小児医療・研究に参加してくれることを心から願っています。
略 歴
1990年 熊本大学医学部医学科卒業