スフィアハンドブック は、「基本的なことが書かれた章」と、「技術的なことが書かれた章」に分かれています。その構成を人間の身体に例えると、上の図のようになります(スフィアパーソンと呼ぶこともあります)。
「我慢をさせない支援」とは、大きな困難に見舞われた人々が、安定した状況で、尊厳をもって生存し、回復するために、あるべき人道対応を指します。
私たちは、ついつい「技術的な章」に目が行きがちですが、いつでも、どこでも、どんな災害であっても、大事になってくるものが、頭や胴体であり、心臓である、「基本的なことが書かれた章」こそ重要です。
人道憲章
スフィアハンドブックの基礎であり、危機によって影響を受けたすべての人びとの共通認識となります。 倫理的および法的な根拠として、人々の「尊厳ある生活」はこの人道憲章によって保障されています。
- 尊厳ある生活への権利
- 人道支援を受ける権利
- 保護と安全への権利
これらは国際人道法や人権法、難民法の規定に反映されている「保護され援助される権利」を含んでいます。
権利保護の原則
人道憲章に記載された法律原理と権利を、4つの原則にまとめてあります。
- 人びとの安全、尊厳、権利の保障を高め、人びとを危険にさらさないこと(Do No Harm)
- 人びとがニーズに応じた支援を、差別なく受けられるようにすること
- 脅迫、暴力、抑圧、意図的な剥奪により身体的または精神的な影響を受けた人びとの回復を支援すること
- 人びとが自らの権利を主張できるようにすること
これら4つの原則は、いついかなる場合であっても、すべての人道支援で遵守すべき原則です。
CHS:人道支援の必須基準
人道支援の「質の保障」および「説明責任」に不可欠な工程と組織的責任を示す 9 つのコミットメントから構成されています。
- ニーズに合致、適切である
- 効果的でタイムリーである
- 地域の回復力を強化し、マイナス効果を生まない
- コミュニケーション、参加、フィードバックがある
- 要望/クレームが受け付けられる
- 調節、補完がなされている
- 継続的な学習と改善がなされている
- スタッフが有能で管理が行き届いている
- 資源が効果的、効率的、倫理的に管理・活用されている
9つのコミットメントはそれぞれ特定の支援の側面を示すものであり、全体が 1 つの基準となっています。 基準を遵守する人道支援組織は、効果的で責任ある人道支援活動を行うことができ、より良い説明責任の履行につながるため、受援側からの信頼を得やすくなることが期待されます。
行動規範
人道支援の原則に則り、具体的な行動指針が記載されているのが、この章です。
- 人道的見地からなすべきことを第一に考える
- 支援はそれを受ける人びとの人種、信条あるいは国籍に関係なく、またいかなる差別もなく行われる。支援の優先度はその必要性に基づいてのみ決定される
- 支援は、特定の政治的あるいは宗教的立場の拡大手段として利用されてはならない。
- 私たちは、政府による外交政策の手段として行動することがないように努める。
- 私たちは、文化と慣習を尊重する。
- 私たちは、地域の対応能力に基づいて支援活動を行うように努める。
- 支援活動による受益者が支援の運営に参加できるような方策を立てることが必要である。
- 支援は、基本的ニーズを満たすと同時に、将来の災害に対する脆弱性を軽減させることにも向けられなければならない。
- 私たちは支援の対象者となる人びとと、私たちに寄付をしていただく人びとの双方に対して説明責任を有する。
- 私たちの行う情報提供、広報、宣伝活動において、災害等の影響を受けた人びとを、希望を失った存在ではなく、尊厳ある人間として取り扱うものとする
この行動規範の上に人道憲章が成り立っています。スフィアハンドブックに不可欠な構成要素です。ぜひ一度、下記リンクから全文に目を通していただき、自分の言葉で言い換えてみてください。その作業が、自らの「胴体」として、「我慢をさせない」支援者の一歩になります。
給水、衛生および衛生促進 (WASH)
英語で”Water Supply, Sanitation and Hygiene Promotion”と表記するため、頭文字から”WASH”とも呼ばれます。
食料安全保障と栄養
避難所および避難先の居住地
保健医療
「技術的な章」 (WASH、栄養、避難所、保健医療)の構成の図には、「人道憲章」「権利保護の原則」「人道支援の必須基準(CHS)」が必ず上につながっているのがわかります。冒頭で述べたように、「基本的なことが書かれた章」は、どの支援でも必要なことが書かれている、大事な章である、ということがおわかりいただけると思います。支援の際には、必ず「基本的なことが書かれた章」にも目を通すようにしておいてください。しかし、そのいざというときは、切迫した状況の中、余裕はないかもしれません。災害が起こる前、準備の時点で、構成を理解しておくことが、とても重要です。
より深く、スフィア基準に学びたい方は下のリンクをご参照ください。