FINEニューズレター編集委員会用記事

16/Jan/2003

  1. 機内で隣の肥満女性に押しつぶされた女性、13000ポンド受けとる
  2. 英国の刑法改正案: 二重の危険(Double Jeopardy)の導入、性犯罪の見直し
  3. 英国で毛皮の需要が高まる
  4. 英国でゲイ・カップルが結婚と同様の法的権利を与えられることに
  5. 英国、教育レベルの向上が寛容な社会の形成に貢献
  6. 英国の高等裁判所、「デザイナーベビー」の作成を差し止める
  7. 英国、新規採用の医療従事者にHIVテストを義務化する予定

新聞記事の要約です。 固有名詞の訳はあんまり調べてません。 間違ってるのがあれば教えてください。

This is a summary of recent news articles relating (directly or indirectly) to applied ethics.


機内で隣の肥満女性に押しつぶされた女性、13000ポンド受けとる

(from `Squashed passenger gets L13,000', Guardian Weekly October 24-30 (7).)

肥満のため肘掛けをあげてようやくエコノミー席に座ることができる女性客の 隣に身動きもできずに11時間も座っていた不幸な女性は、着陸後、胸部の内出 血、深刻な打ち傷、足の筋肉の断裂のために入院し、一ヶ月病院のベッドにい た。二年後の今日も彼女にはまだ怪我の後遺症で苦しんでいる。

彼女が航空会社のヴァージン・アトランティックに苦情を言ったところ、会社 から贈られてきたのはフルーツバスケットだけであった。彼女が怪我と業務上 の過失で訴えると脅したところ、会社側は13000ポンドで和解することに同意 した。

一口コメント

エコノミー症候群より恐ろしい。


英国の刑法改正案: 二重の危険(Double Jeopardy)の導入、性犯罪の見直し

(from `Scales of justice to be rebalanced', `Overhaul of Victorian sex laws wins cross-party support', Guardian Weekly November 28-December 4 (8).)

英国労働党が議会に提出予定の刑法改正案(the criminal justice bill)では、 殺人やレイプやクラスA薬物犯罪などの30種の犯罪について、説得力のある新 しい証拠が明るみに出たときに一度無罪になった容疑者の再審を行なうことが 提案されている。この「二重の危険」ルールは遡及法的に適用されるとしてい る。また、ヴィクトリア時代から続いてきた性犯罪に関する法律も大幅に見直 しが行なわれ、同性愛犯罪が制定法から完全に姿を消すほか、レイプや小児性 愛犯罪の摘発を強化するために性交渉における同意条件の厳格化などが提案さ れている。

1985年には25%であったレイプ訴訟の有罪判決は、2000年には7%まで下がって いる。そのため、新しい制定法では同意が認められない状況として、女性が無 意識である、脅迫されていた、などの状況を認めることにしている。レイプの 定義も広げられ、男性性器による肛門、口、膣などの貫通を含むものとされる。

児童に関しては、13才未満の児童はいかなる性交渉にも同意を与えることがで きないとし、したがって13才未満の児童との性交渉は自動的にレイプとみなさ れる。

内務大臣のデヴィッド・ブランケットによれば、同性愛を犯罪化することは平 等の原理に反している。ただし、改正法案では女性による男性のレイプは認め られていない。もっとも、新しい強制わいせつ罪では、姦淫を強制された男性 が女性を訴えることができる。

・貴族院の主席裁判官(Lord Chief Justice)のウルフ卿は、レイプの量刑に関 して、夫や知り合いによる場合も見ず知らずの者によるレイプと区別しないよ う命じるガイドラインを出した(`Date rape guidelines change', Guardian Weekly December 12-18 (8).) このガイドラインによれば、男性による男性の レイプも同様の扱いを受けるべきだとされている。


英国で毛皮の需要が高まる

(from `Fur flies as Christmas sales take off', Guardian Weekly December 5-11 (22).)

英国では毛皮産業が80年代以降で最も高い成長率を示している。その背景には、 毛皮を着ることに対する市民の態度が軟化したことがあると見られる。

英国では90年代、毛皮を着ることはタブー視されていたが、昨年英国では毛皮 の販売量が35%増えた。ここ数年、ファッション業界ではミンクのコートが大 きく宣伝されており、マドンナやジェニファー・ロペスやケイト・モスといっ た有名人も毛皮を着ていることが、毛皮を着ることに対する市民の態度を軟化 させていると思われる。また、90年代の過度の政治的公正(political correctness)に対する若者の反抗とも考えられる。

PeTA (People for the Ethical Treatment of Animals)は、トップ・アイドル のソフィー・エリス・ベクスターが皮を剥がれたキツネを掲げているポスター を公表したばかりで、以前と同様、精力的に毛皮の残酷さを訴えている。 (www.furisdead.com)

また、PeTAはこれまでは回収した毛皮のコートを焼却するか土に埋めることに していたが、最近はホームレスに無償で提供することにしている(`Recycled warmth: Animal charity gives furs to homeless', Guardian Weekly December 19-25 (6).)。

関連ニュース

PeTA
「動物の倫理的扱いを求める人々(People for the Ethical Treatment)」 のウェブサイト。

英国でゲイ・カップルが結婚と同様の法的権利を与えられることに

(from `Gay couples to be given legal rights', Guardian Weekly December 12-18 (9).

同性のカップルは`civil partnership'の手続きを行なえば、結婚している異 性のカップルと同様、所有権や遺産相続権といった結婚に伴う権利を与えられ ることになる。ただし、いくつかの国ですでに行なわれているような、法的に 結婚していない(異性の)カップルにもそのような権利は与える計画は見送られ た。 ・昨年7月の欧州人権裁判所の判決を受け、英国では性転換者は戸籍上の性を 変更し、転換後の性で結婚する権利がまもなく認められることになった。 ・一方、日本では埼玉医大で性転換手術(女性→男性)を受けた人が、 戸籍訂正を申請したところ、東京家裁はこの申請を却下した。日本では 昨年8月、12月に続き3件目。戸籍法上、訂正が認められるのは「錯誤」の 場合に限られるという理由から(産経新聞2003年1月13日朝刊より)。


英国、教育レベルの向上が寛容な社会の形成に貢献

(from `Rising education standards creating a nation of liberals', Guardian Weekly December 12-18 (10).)

1980年代中盤以降、ドラッグや同性愛や人種についての英国人の考え方はます ます寛容になっていることが、英国社会研究所の調査で明らかになった。

英国社会研究所(the National Centre for Social Research)がサッチャー政 権時代の1983年から毎年続けている英国の社会的態度(British Social Attitude) という世論調査によると、1983年にマリファナの合法化に賛成して いたのは12%であったが、2001年には41%に増え、反対していたのは75%から46% に減った。また、1985年には同性愛が「常に」あるいは「たいてい」不正であ ると答えたのは70%だったに対し、2001年には47%になり、3分の1が「まったく 不正ではない」と答えた。さらに、自分が人種差別をしていることを認める人々 は1985年には34%であったのに対し、2001年には25%に下がった。

英国社会研究所のレポートによれば、これらの変化は、高等教育の普及による ところが大きいとされる。レポートはまた、今後より不寛容な世代が消えるに つれ、英国はますます寛容な社会になるだろうという楽観的な予測を述べてい る。


英国の高等裁判所、「デザイナーベビー」の作成を差し止める

(from `High court rules out `designer baby'', Guardian Weekly January 2-8 (8).)

子供の遺伝病の治療のために遺伝子スクリーニングを行なって新しい子供を作ろうとしたカップルは、裁判所によってその希望を断たれた。

高等裁判所は「デザイナーベビー」の出産にゴーサインを出したHFEA(Human Fertilasation and Embryology Authority)の判断は法的な権威を持たないと 判決した。新生児の臍帯血からの幹細胞を用いることによって遺伝的な血液の 疾患を持つ3才の子供を治療しようと考えていたカップルは、この判決に対して、 家族のプライバシーの侵害であり、子供の生命権の侵害であると批判した。 HFEAは控訴するかどうかを検討中である。

・BBCの記事によると、このカップルは今回の差し止めを受けて、外国に行って でも手術を行なう決意があると述べている。 (`Family vow to have designer baby': http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/2643483.stm)


英国、新規採用の医療従事者にHIVテストを義務化する予定

(from `Health recruits to face compulsory HIV tests', Guardian Weekly January 9-15 (10).)

英国保健省の提案によると、早ければ今年から、血液感染の恐れがある職場に 就く医者や看護婦は、最初にHIVとB型およびC型肝炎のチェックを受けること が義務化される。これが実施されると、NHSの新規医療従事者の5分の1にあた る1万5千人が毎年チェックを受けることになる。

このチェックを受けなければならないのは、たとえば注射針や手術具によるア クシデントがありえるポストである。訓練中の準医療従事者(パラメディック ス)や代診医や外国から来た医者や看護婦もチェックを受けなければならない。 国外で働いていた元NHS患者も、病院長の判断でチェックを受ける必要があり うる。

この決定は、HIVを保有していた医療従事者から患者が感染したことがあるか どうかについての大規模な調査に基いてなされている。英国では14年間にその ような調査が10数件あったとされるが、英国ではまだそのような感染は 生じていない(世界中ではこれまでに2件報告されている)。 外国からやってくる看護婦の多くがHIV保有率の高い国からやってきている という事実も背景にある。

BMA(英国医師会)は一部の医療従事者を仕事に就く前にだけチェックするこの ような方策は有効でないとしている。

関連サイト

NHS staff 'face HIV tests'
BBCの記事。同じような内容。海外から英国への看護婦のリクルート数は、 フィリピンが一位で、南アが二位だそうだ

Satoshi KODAMA <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed Jan 29 14:03:25 JST 2003