原題は The War of the Worlds で、『(地球と火星の)世界間戦争』というほどの意味か。H. G. Wells、1898年 (世紀末ですなあ)の作品。
火星人が宇宙船でイギリスにやってきたっ。イカかタコかとみまがう彼ら は三本足の機械に乗り、熱線や黒い毒ガスを使って大都市ロンドンの人々を殺 戮し、人間の生き血をすするっ。圧倒的な力の差の前に、主人公は「長らく地 球の支配者であった人間を支配する、新たな支配者が現われたのだ」と絶望す るが…。
イギリスの地図を見ながらでないと、楽しめない作品だと思う。日本語に 翻訳する時は思い切って日本の地名に変えてしまった方がよっぽど楽しめると 思うが。
最初は訳がかなり悪いと思ったが、後半は慣れたのか比較的すらすらと読 め、第二部は圧倒された。とりわけ砲兵の夢物語には真に迫った狂気が感じら れて面白かった。
割とゆっくりと話が進んでいたので、最後のどんでん返しはいささか急な 気もしたが、しかし伏線などもよく張られており、まとまりの良い作品となっ ている。この人も想像力がすごい。まるで見て来たかのような描写は、視覚に 直接訴えて来る。また、文化批判的な側面もあり、考えさせられるところがあ る。
とある工兵:「タコだな」とその男はいった。「おれにいわせるとタコだ。 人間が魚をとるのなら話はわかるが--そいつらはさかなの戦士ってわけか」 (p.54)
問題の砲兵:「もののやくにたたないもの、じゃまっけのもの、有害な奴は 死ななくてはならない。そういう連中は死ぬべきだ。進んで死ぬべきだ。要す るに、生きて、種属を汚濁するということは、一種の裏切り行為だ。そういう 連中は幸福にはなり得ない」(p.222)
09/29-10/13/97
B+