原題は Voyage au Centre de la Terre なので、フランス語はよくわからないが、おそらく『地球の中心への旅行』と かいう意味であろう。Jules Verne(1828-1905)、1865年の作品。
変わり者のドイツ人鉱物学者(リデンブロック)がいて、物語の主人公はそ の甥のアクセルである。二人が古い羊皮紙に書かれた或る錬金術士の暗号文を 解読すると、そこにはなんと、この錬金術士がアイスランドの休火山から入っ て地球の中心にたどり着いたということが書かれてあったっ。
そこで鉱物学者とアクセルは、アイスランドに行き、そこで一人のアイス ランド人の猟師ハンスを案内人として雇い、地底への冒険へ旅立つ…。
SFというよりは、幻想文学という色合いが強いと感じた。「なんとか奇譚」っ ていう感じ。地底世界の描写は、ぼくの目から見てもかなり無理があり、熱狂 的に読めるものではない。小学生か中学生の時に読んでいればもっと興奮して 読めたかも知れないが。
とはいえ、ほとんどお色気もなしに最後までぐいぐい読ませるのはすごい。 ヴェルヌの想像力は実にすばらしい。(そいえば、お色気なしによく読ませる なあ、という感想は彼の『15少年漂流記』を読んだときにも抱いた)
とりわけ、甥っ子が仲間からはぐれ、真っ暗闇の中でさまようシーンや、 彼らが地底の海を発見し、イカダでさまようところなどは、ただただ圧倒的で ある。
ただし、最後の地底からの脱出の仕方は、かなり強引という気がした。ま あ、奇抜だとは言えるが。
アクセル:「そうだ、火薬です!爆破です!爆破させましょう。邪魔ものはふっ とばしてしまいましょう!」(p.302)
巻末の解説によると、この作品が訳されたころ(1960年代)にはヴェルヌ再 評価の熱が高まっていたらしい。訳を読むかぎりでは、それほど文学的に高い 作品とは思えないが。
ヴェルヌの作品には他に『海底二万里』、『八十日間世界一周』、『月世 界へ行く』などがある。少なくとも『月世界へ行く』は読んだ方が良いかも知 れない。
09/24-27/97
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