原題は Fredric Brown, The Mind Thing (1961) で、創元推理文庫の初版は1963年(井上一夫訳)。
地球から73光年の彼方にある惑星からアメリカに飛来した知性体という奇怪な生物。 これは自由自在に他の動物にのり移れるという不可思議な力を備えている妖怪だった。 知性体の到来とともに、その地方には人間や家畜や野生の動物が自殺するという 異様な現象が起こり始めた。 この怪現象にいち早く注目したのは、 たまたまその土地に来ていた天才的な物理学者だった。 この姿なき怪物の正体を看破して人類を破滅から救おうとする教授の頭脳と、 知力の塊りともいうべき知性体が演じる虚々実々の知恵くらべ! (扉から引用)
この「知性体」は、宣伝文句にあるほどには賢くなく、 むしろ間抜けである。
結末も途中でぼんやりと予想が付くし、 読み終えてみるとそう大した話でもないのだが、 推理小説風のサスペンスが効いていて、 一気に読ませる。 知的興奮度は低いが、推理小説が好きなSFファンには良いかも。
ミス・タリー: 「でも宇宙には地球以外に無数の天体があるし、 生物が住んでるのも何百万とあるんです。 人間以外の知性体がどんな能力をもち、 どこまでのことができるか、 わたしたち人間にどうしてわかります? まったく異質の地球以外の存在に何ができるか、 どうしてわかります?」(160頁)
ミス・タリー: 「わたしたち人類だって、 いまほかの天体に働きかけてるでしょ? 宇宙で人類がいちばん進化した生物だなんて、 どうして考えられます? 地球にほかの天体から生物が一匹きていないと、 どうしていえるんです?」(161頁)
06/19/98
B-