こだまの(新)世界 / 文学のお話

コナン・ドイル、『失われた世界』


書誌学的情報: The Lost World, by Arthur Conan Doyle, 1912.
創元SF文庫の初版は1970年で、龍口直太郎訳となっている。 とくに読みにくい訳はなかったように思う。


内容

その昔、地球上に横行した古代の生物は絶滅したのだろうか? 世界じゅうでこの問題が論議されていた時、 アマゾン流域で死んだアメリカ人の遺品の中から 奇妙な謎のスケッチ・ブックが発見された。 人跡未踏の蛮地を踏んだ唯一人の人間が描いた前世紀の生物。 〈失われた世界〉は果たして存在するのか? イギリス古生物学会の名物男チャレンジャー教授は探険隊と共に勇躍、 その探査におもむいた。 ミステリとSFの巨匠コナン・ドイルが描く不朽の名作《ザ・ロスト・ワールド》。 (扉から引用)


感想

シャーロック・ホームズ・シーリズで知られるコナン・ドイルだが、 この物語でも登場するチャレンジャー教授の活躍を描いた、 一連の「チャレンジャー教授シリーズ」というのもあるんだそうな。 この物語はその代表作らしい。

『失なわれた世界』はまだ地球上に未知の世界があると考えられていた 20世紀初頭であれば大人が読んでも興奮するだろうが、 現代では『火星のカーター』シリーズ同様、 ファンタジーとしか思えないので、 夢のある小・中学生が読むべき本であろう。

ただし、 一緒にアマゾンを旅する4人のキャラクターは非常に魅力的に描かれている。 憶病だがそれを態度に表わさない主人公マローン、 冒険好きで勇敢なジョン・ロクストン卿、 傲慢な天才科学者チャレンジャー教授、 弱音を吐くことのない皮肉家サマリー教授、 各人各様の個性を持っていておもしろい。 さすが巨匠のことだけはある。


名セリフ

特になし。


07/??/99-08/02/99

B-


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Feb 07 21:42:47 LMT 1999