ソ連軍が北海道に進軍して来た! アメリカはソ連と密約を結んでいるので、 安保条約通りに日本を助けてくれない。 自衛隊は役に立たないというので、 市民が半分は日本を守るため、 半分は物見遊山で北海道へやってきて、 ソ連軍に対してゲリラ活動を行なう。 さらに北海道に住むアイヌ人たちは、 この機に日本から独立しようと試みるが…。
軽薄な日本文化への鋭い批判を伴なった、どたばた戦争コメディ。
(今回は紹介文がなかったので、それらしいのを書いてみました)
一章ごとに話(舞台や登場人物)がばらばらに進んでいき、 最後までその調子なので、 全体として一応統一はしているが、 盛り上がりに欠ける。 もちろん、 作者は意図的にそのような構成にしたのであろうが。
結末も崩壊している。 もちろん、 作者は意図的にそうしたのだろうが。
しかし、部分部分はけっこう笑わせてもらった。 作者も意図的にそうしたのだろう。
イェゴロフ将軍「優秀な男とはそうしたものだ。饒舌が思考に先行する」(62頁)
前田「それがさあ、むしろ喋らないとバテるのよな。 おれ沈黙すると自分が自分でないような気がして不安になってさ、 たちまちその不安でもって死んじゃうの。 おれこうして生きているのも、 立って歩いてるのも、すべてこれお喋りのお陰なのよな。 つまり饒舌のエネルギイってものはコレステロールの消費と同じでさ、 この異常発酵の文明の中で見せかけの正常さを保つのに必要なの。 おれ自身と外部の世界を統括できるメタレベルというのが 饒舌の中に発見できるもんだから、 それによって自分がアウフヘーベンされているような されていないようなどっちでもないようなそんな気になるわけ。 つまり他者というのはおれにとっては沈黙の神であって」(102頁)
星新一「いやまあ日本もチェルノブイリみたいな、 すぐ故障する原発を、 全国いたるところに作っときゃよかったんだ」 「そしたらどこの国も怖がって、戦争しかけてきたりしやせんのよなあ」(115頁)
智子「わたし、絞首刑なんて、絶対にいやですからね」(167頁)
前田「そ。おれもうドルの下落と平行して英語どんどん下手になっていくの。 愛のためのアルジャーノン現象。まごころを君に。あっ。 これはまあなんと、しろたへの、お臍の下は金ぴかの、 まあまあ本物のブロンドちゃん。 あっもうこっちはくろがねの、ころもの下は赤十字。 あっち向いてほい」(244頁)
前田「いいや。比喩的なのはむしろこの現実の方だよ。 つまり本当の現実または知を正当化するメタ物語への不信感だの、 論理の破綻だのに対する比喩的表現がこんな滅茶苦茶な結末になったわけであって、 このコンピュータ・ゲームのような現実は、 実は言語ゲームの複数性を認めているポスト・モダンの、 珍妙で新奇な物語形態をとり入れた現実らしいんだよね。 だってその証拠に……」(246-247頁)
03/08/98-06/16/98
B-