こだまの(新)世界 / 文学のお話

エスパイ


小松左京、『エスパイ』、角川文庫、1977年。 ただし、1964年に『漫画サンデー』に連載され、 1965年に早川書房から単行本が出されたらしい。


内容

刻々と"死の瞬間"が近づいている。 音速の3倍以上のスピードで、 超高空を飛んでいるジェット機の胴体にしかけられた時限爆弾! --ぼくは念動力(サイコキネシス)のありったけの能力を駆使して、 時限装置をもぎ離そうと必死にいどみかかった。

人の心を読み、 遠く起こった出来事を察知する遠感(テレパシイ)や透視能力、 意志の力で物体を動かす念動力を持つ超能力者の諜報集団"エスパイ"。 その一員のタムラに《ソ連首相暗殺計画》を未然に防げという、 緊急指令が下った。 東西二つの世界の孤立を避け、力の均衡を保つためだ。 だが、またしても邪魔が入った。 秘密任務をすでにかぎつけられている……。 最高の痛快長編SF。
(カバー裏から引用)


感想

ひまつぶしにはなったが、大した感慨なし。

ところで、この小説でもやはりヒロインが、 危機一髪で助けられることなしに、 敵に凌辱される。 現実的というかなんというか…。

また、敵のボスは地球を監視する宇宙人であり、 人類に「サタン」と呼ばれる存在であった--という最後の展開は、 ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」 の歌詞の元ネタである本(名前忘れた)の内容を下敷きにしてる様子。たぶん。 ちょっと尻切れトンボの感あり。

あと、読点の打ち方がところどころ気になった。 おれも人のことは言えないが、 読点が必要ないところにも打たれてる感じ。

菊地某とかの冒険小説が好きな人にはお勧めかも知れない。


名セリフ

リンツ伯
「征服者には誰でもなれる」 「勝敗は力と運だからな。 --しかし、支配者には誰でもなれるとはかぎらない。 支配者がその支配を維持するのは、何によってだかわかるかね? 鞭だよ。情容赦なく鞭をふるうことのできる、 威厳と勇気をもったものだけが、支配者たり得る」(169頁)


なぜ、人類は、"悪"をなくすことができないと思う?」 「それは--人類が、愚劣だからだよ。 彼らの理性的能力には"種"としての限界があるんだよ。 彼らはもう生物として、 これ以上、高貴なすぐれたものに、なり得ないのだ」(353頁)


11/23/98-11/24/98

C


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Tue Nov 24 20:49:45 JST 1998