原題は、 John Wyndham, The Midwich Cuckoos (1957) で、ハヤカワ文庫の初版は1978年、翻訳者は林克己。 訳はちょっと気になるところもあったが、全体的には読みやすい。
9月26日月曜日の夜半、
ロンドンにほど近い小村ミドウィッチに白く輝く
円盤状の未確認飛行物体が着陸するや、
半径1マイル内のあらゆる生物を眠らせてしまった。
そして24時間後、
円盤はふたたびいずこへともなく姿を消した。
住民はすべて無事。
村は何事もなかったかのように見えたが……
村に住むあらゆる受胎可能の女性--17歳から45歳までの全員が妊娠していたのだ!
イギリスSF界の重鎮が描く、戦慄と恐怖の異色作
(裏表紙から引用)
原題は「ミドウィッチ村のカッコー」という意味。 周知のとおり、カッコーは他の鳥の巣に卵を産んで、 自分の雛を仮親に育てさせる。
この物語も同様で、 ミドウィッチ村の女性たちは何者かによって妊娠させられる。 そして、生まれてきた子供たちは金色の目を持ち、 異常な能力を持っており、急激に成長する。
こうした異常な現象に対して、
「一体だれが何のために?」
「彼らはわれわれと同じ人間なのか」
「進化とは何なのか?」
「地球とは、何か人間を超えたものによる巨大な実験室なのであろうか」
などという問いがなされる。
小さな村で起こる出来事のリアルな描写と、 生の意味に対する根源的な問いとが、 この作品の醍醐味であろう。
ただし、 こうした哲学的な問いが突き詰められていないきらいがあり、 結末もあっけない。 あまりに事件の詳細な描写を行なってきたために、 後半で息切れしてしまったのだろうか。 いままで読んだウインダムの作品に比べると少し見劣りするように思えた。
侵略ものが好きな人にお勧め。
11/02/98-11/03/98
B-