こだまの(新)世界 / 文学のお話

アーサー・C・クラーク、『幼年期の終り』


書誌学的情報: Arthur C. Clarke, Childhood's End, 1953
早川文庫は、初版が1979年で、翻訳および解説は福島正実。 おれが持ってるのは第21刷となっているが、ところどころに誤字脱字がある。


内容

人類が宇宙に進出したその日、 巨大宇宙船団が地球の空を覆った。 やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまする-- 人類はもはや孤独ではない。 それから50年、人類より遙かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、 その姿を現すことなく、 平和裡に地球管理を行なっていた。 彼らの真の目的は? そして人類の未来は? 宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、 巨匠が詩情豊かに描きあげたSF史上屈指の名作
(カバー裏から引用)


感想

クラークの作品を読むのははじめて。 これは、ストイックで娯楽性に欠けるという前印象があったため。 同じような印象はアシモフに対しても抱いていた。

この作品は、以前最初の方を読んだきり、読むのを中断していた。 断続的に読んだせいか、あまり感激しなかった。 クラークを読むと宇宙的視点に立つことができて感動する、 という話を聞いていたが、 残念ながらそのような経験はできなかった。

もっとも、最後の方は結構読ませたし、 人類の未来とか進化という発想 (それに、現在を「幼年期」と見る考え方)は興味深いし、 また、詩情というのも感じた。 しかし、日本語で読むかぎり、 詩情という点ではウインダムの方が勝っていると思う。 やはりおれはウインダムやヴォークトやハインラインの方が好きらしい。

というわけで、ストイックなSFが好きな人におすすめ。


名セリフ

カレルレン
「人類は、望みとあれば好きなだけ殺し合うがいい」 「それは人類と人類自身との法律とのあいだの問題だ。 しかしもし人間が、 食用かあるいは自衛以外の目的で、 人間と世界を分かち合っている動物を殺した場合は --そのときは人間はわたしに対して責任を負うのだ」(67頁)

ジーン: 男という男は、本質的にみんな一夫多妻主義者なのだから嫌だ。 (121頁)


05/16/98-11/29/98

B


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed Dec 2 16:06:38 JST 1998