(いちじせいしつ、にじせいしつ primary and secondary qualities)
9. Primary qualities of bodies. Qualities thus considered in bodies are, First, such as are utterly inseparable from the body, in what state soever it be; and such as in all the alterations and changes it suffers, all the force can be used upon it, it constantly keeps; [...] v.g. Take a grain of wheat, divide it into two parts; each part has still solidity, extension, figure, and mobility: divide it again, and it retains still the same qualities; and so divide it on, till the parts become insensible; they must retain still each of them all those qualities. [...] These I call original or primary qualities of body, which I think we may observe to produce simple ideas in us, viz. solidity, extension, figure, motion or rest, and number.
10. Secondary qualities of bodies. Secondly, such qualities which in truth are nothing in the objects themselves but power to produce various sensations in us by their primary qualities, i.e. by the bulk, figure, texture, and motion of their insensible parts, as colours, sounds, tastes, &c. These I call secondary qualities. [...]
John Locke, AN ESSAY CONCERNING HUMAN UNDERSTANDING, Book II, Ch. 9
To excite tastes, odours and sounds, I believe nothing is required in external bodies except shapes, numbers and slow or rapid movements. I think that if ears, tongues and noses were removed, shapes and numbers would remain but not odours or tastes or sounds.
---Galileo
人間の感覚が事物の尺度であるという主張は誤っている、それどころか反対に、 感官のそれも精神のそれも一切の知覚は、人間に引き合せてのことであって、 宇宙〔事物〕から見てのことではない。そして人間の知性は、いわば事物の光 線に対して平でない鏡、事物の本性に自分の性質を混じて、これを歪め着色す る鏡のごときものである。
---フランシス・ベーコン
ある事物が持つ一次性質とは、その物の大きさとか形など、 その物を認識する者とは無関係に存在すると考えられる性質のこと。 それに対し、ある物の二次性質とは、 その物の色やにおいや味などの感覚的な性質のことで、 その物を認識する者に依存して存在すると考えられる性質のこと。
たとえば、キットカットの性質を挙げると、 長方形である、 茶色い、甘い、サクっとしている、と言うことができる。 われわれは日頃なんとなくこれらの性質をみな同じようなものとして考えているが、 ロックはこれらの性質の違いを鋭く指摘し、一次性質と二次性質にわけた。
上に挙げた性質のうち、「茶色い」と「甘い」は、 われわれの視覚や味覚に依存した性質で、 われわれの感覚器官とは異なる感覚器官を持つと考えられる犬やハエや火星人は、 (もし人間の言葉を理解したなら)「黒い」とか「赤い」とか 「辛い」とか「甘酸っぱい」とか答えるかもしれない。 だからこれらは二次性質であると考えられる。
しかし、犬やハエや火星人であっても、 (もし長方形とか正方形とか円形とかの区別を学んだならば) キットカットが「丸い」とか「ピラミッド型だ」などとは言わないであろう。 これは、キットカットの形は感覚に依存していないからである。 したがってこれらは一次性質だと言える。
もちろんキットカットがどういう形であるかを知るためには 目か手を用いる必要があるが、 キットカットが長方形であることがわれわれの感覚に依存していないことは、 犬が計ろうがハエが計ろうが火星人が計ろうが、 「キットカットは長方形である」 という結論に至る(と想像される)ことによってわかるだろう。
ところで、 「サクっとしている」は一次性質だろうか二次性質だろうか? おそらくハエはキットカットを「サクっとしている」とは考えないだろうから、 二次性質だと思われる。
(12/Oct/2000)
冒頭の引用は以下の著作から。