(りえき interest)
利益は、上位の類概念を持ち合わせていないため、 通常の仕方では定義できない言葉の一つである。
ある物が個人の利益を促進する--または利益に役立つ-- と言われるのは、 その物が彼の快の総計を増やす傾向にある場合であるか、 結局は同じことであるが、彼の苦の総計を減らす傾向にある場合である。
---ジェレミー・ベンタム
政治哲学や生命倫理学などで頻繁に用いられる語だが、 英語のinterestは「利益、利害、利害関心」といろいろ訳されるように、 多義的な概念である。たとえば、あるカトリック司教は、 彼が個人的には知らない女性が人工妊娠中絶をすることに対してinterestを 持つだろうか?
interestが多義的だというのは、 利益または利害という意味では、 植物や(自己)意識のない存在にも何らかの(たとえば生存に対する) interestがあるように思われるが、 利害関心という意味においては、 実際に何かに関心を抱ける存在である人間やその他の高等動物しかinterestを 持てないと考えられるからである。
また、ある人のinterestが何なのかということも、あいまいである。 人によっては、その人が実際に欲しがっているものを、 当人のinterestとみなすが、別の考え方では、 その人が合理的ならば欲しがるであろうものが 当人のinterestとみなされたりもする。
というわけで、この語を使用するときには十分に注意し、 なるべくなら事前に定義を行なうことが望ましいであろう。
18/Jan/2002
上の引用は以下の著作から。