総督邸の功利主義

(そうとくていのこうりしゅぎ Government House utilitarianism)

This is called `Government House' utilitarianism since it seems to have been the view of some British colonial officials in India and other British colonies: the British officials would understand that rights are simply ingenious devices for maximizing utility; the natives would be taught to think of rights as intrinsically justified and inviolable.

---Will Kymlicka

法律は正義でないと、民衆に向かって言うのは危険である。 なぜなら、民衆は、それが正義であると信じるがゆえにこそ従っているからである。 だから、民衆に対しては、同時に、法律は法律であるがゆえに従わなければならない、 あたかも、目上の人たちには、彼らが正しいからではなく、 目上だから従わなければならないのと同じであるように、 と言ってやらなければならない。

---パスカル


一般人が下手に功利主義的に考えると、 みな、自分に都合のよいように「功利計算」をして、その結果、 約束を守るとか嘘をつかないといった常識的な道徳が揺らぐ可能性がある。 そこで、功利主義は支配者層のあいだで密教的に取扱い、 一般人には秘密にしておき、彼らには単に「嘘はだめ」「約束は守る」などの 義務を教えるだけに留めておいた方が、功利主義的に考えて望ましいとする議論。

最初にシジウィックがこのような考え方を検討したが、 B・ウィリアムズが有名にした。たとえば『哲学は生き方について何が言えるか』 の翻訳180頁以降を見よ。

25/Jun/2004


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Aug 21 16:49:28 JST 2004