尊厳

(そんげん dignity)

尊厳は、他の道徳的信念に依存するか、その副産物である。 ある何かがわれわれの尊厳を侵害していると感じるのは、 われわれがすでにそれを不正なものだと確信している場合だけである。

---ウィル・キムリッカ


誰もその意味をよくわかっていないが、とりあえず重要視している概念。 「それは人間の尊厳に反する」と言われると、 たいていは反論できなくなってしまう。この意味では、人権と同様、 尊厳は「切り札」として用いられる場合があると言える。

カント的には、人格のみが「尊厳Wuerde」を持ち、 その他あらゆるもの (物件と呼ばれる。ついでに、 この人格personと物件thingという区別は法的な区別に由来する) は、交換できる「価値Preis」しか持たない。 つまり、人格は交換のきかない至上の価値を持つ。 この意味では、尊厳に反するとは、 人間を手段としてのみ扱っているという意味で、 カントの定言命法に反すると 解することができる (手段と目的の項も見よ)。

しかし、多くの場合は、「それは不正だと感じるが、 なぜ不正なのか説明できないので、とりあえず『尊厳に反する』と言っておこう」 くらいの気持ちで使用されているのではないかと思う。

23/Aug/2004


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Thu Aug 5 02:41:38 JST 2004