生命の質 (QOL)

(せいめいのしつ quality of life)


「すべての生命(人命)は等しく重要であり、 安楽死や選択的人工妊娠中絶などによって無実の人間を殺すことは許されない」 という生命の尊厳(SOL)の立場に対して、 「生命には質が存在し、一定の質を満たさない人命は、 終わらせてもよい」という立場のこと。 簡単に言えば、「死んだ方がまし」「死んだ方が幸せ」という判断をする人は、 このQOLの考え方に基づいており、そのような発言をぜったい認めない人は、 SOLの立場を取っていると言える。 シンガーが『生と死の倫理』で後者の立場を支持しているのが代表的。

なお、QOLは「生活の質」とも訳されるが、 この場合は「どういう治療法ならば患者が快適な生活を送れるか」 を考察する場面で使われることが多い(ホスピスケアも含む)。 この意味のQOLはつねに高めるべきだと言えるが、 SOLと対立する意味でのQOLは、 つねに優先すべきとは簡単には言えない。 この辺の事情については、『生命倫理学を学ぶ人のために』所収の 奥野満里子論文を参照せよ。


参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 24 16:51:38 JST 2003