(りんりこんさるてーしょん ethics consultation)
米国の『生命倫理学事典(第三版)』によると、倫理コンサルテーションは、 「医療において生じる倫理的問題を、患者や家族、医療者等が解決するのを助 けるために、個人またはグループによって提供されるサービス」などと定義さ れる。 典型的な倫理的問題は、インフォームド・コンセント、患者の判断能力の有無、 代理決定、守秘義務とプライバシー、終末期医療をめぐる諸問題などである。 「個人またはグループ」とあるが、実際には数名のチームによって提供される 場合が多く、そこには医師と看護師の他に、MSWや神父、その他の専門家など が含まれる 。
倫理コンサルテーションは、一般に、臨床倫理委員会(HEC: hospital ethics committee)によって提供されるサービスである。米国では、研究審査のための 倫理委員会(IRB)とは別に、臨床における倫理的問題に対処するために、70年 代の終わりごろから臨床倫理委員会が発展してきた。一般に、今日の米国にお ける臨床倫理委員会は、常設であり、医師、看護師、MSW、法律家、神父、そ の他の専門家によって構成されているという。また、その主要な役割は病院ス タッフの倫理教育、院内指針の作成と見直し、そして倫理コンサルテーション とされている。
2000年前後の米国の調査では、米国の全病院のうち、約93%が臨床倫理委員会 を持っているとされ、また同時期の別の調査によると、米国の400床以上の病 院、連邦政府の病院すべて、また研修病院協議会の登録病院のすべてにおいて、 倫理コンサルテーションが提供されていると報告されている(以上、上記の事 典から)。
倫理コンサルテーションのやり方にはいろいろありうるが、たとえば、常設の 倫理委員会の下に終末期に関する委員会を設置し、治療中止を検討している担 当チームがその委員会に助言を求めるというシステムなどが考えられる。小さ な規模の病院で倫理コンサルテーションのサービスを提供することが難しけれ ば、医師会あるいは地方自治体が主体となって、複数の病院のニーズに応じら れる地域の倫理委員会を立ち上げることも考えられる。
治療に関する選択肢が増え、人々の価値観も多様化するにつれ、医療上の意思 決定はますます複雑になっている。治療方針が十分な倫理的配慮を持って決め られたことを保証するために、今後はますます臨床倫理委員会による倫理コン サルテーション制度が必要となるだろう 。
30/Jun/2006