(ばいおえしっくす bioethics)
生命科学と医療の道徳的側面--道徳観、道徳的決定、道徳的行為、道徳的指針-- の体系的研究であり、学際的環境においてさまざまな倫理学的方法論を用いる ものである。
---バイオエシックス百科事典第二版
アメリカで生まれ育った生命倫理学は学際的な学問であり、 狭義の倫理学よりも広い学問領域を包括する。 それは社会政策的な考察を含む、 広義の倫理学であるといえる。 しかし、日本においては、 そのような考察が十分に展開されているとはいえない。 生命倫理に関する学際的な学会や研究会が作られてはいるが、 そこでの論議は個人の生命観や価値観の一面的な主張というような低次元のものに とどまっていることが多い。
---加茂直樹
日本ではいつでもこうなのである。新しい学問ができると、まず中身とは無関係な タイトルだけの便乗使用がはやる。「バイオエシックス」(生命倫理学)、 「インフォームド・コンセント」(医師が患者に選択肢の説明をして患者に 選ばせる決定方法)などなど、日本では古いままの中身に新しいカタカナの 名前をはりつけて売りに出す人が多い。悪いのはジャーナリストで、 中身が旧態依然なのをうすうす承知の上で、「きりくちが新しい」などと もてはやす。学者は、勉強不足なのに知ったかぶりをして、カタカナ語で 煙幕をはる。どうせ言論風俗営業の世界で起こることだからどうでもいいばかりも、 言ってられない。苦心して本物の翻訳書など出しても、「もうバイオエシックス なんて古いですよ」と言われてしまうのだ。これでは困る。
---加藤尚武
この語は、 1970年にV・R・ポッターという人が造語したらしい。 彼の定義は、「生存の科学」という意味で、 現在使われている、 《健康管理や生物医学から生じる倫理的問題に関する研究》 というような意味ではなかったんだそうだ。
「バイオエシックス」という語をどう訳すべきかについては、 八幡先生の 論文を参照のこと。
また、オーストラリアのモナシュ大学にある ヒューマンバイオエシックス研究所から 同名の学術雑誌Bioethicsが刊行されている。
上の引用は以下の著作から。