学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第1章教育現場でコンピテンシーとEPAsを評価する際の理解のために

1) 基本編

(1) コンピテンシー基盤型医学教育とは~その歴史とカリキュラムにおける重要性~

 1994年コンピテンシー基盤型教育の概念はSpadyによって紹介されました。その際には「意図された教育目標とアウトカム」という言葉で教育を計画、発展、提供、記述する一つの方法であると定義されています。カリキュラム修了時のアウトカムはカリキュラムを計画する際の決定的な因子であり、学習者が修了時に示してほしいアウトカムからカリキュラムを開発するのであって、教育者が考えている目標からカリキュラムを開発するのではないことを示しています。従来、教育目標は知識・技能・態度のカテゴリーに分類されて記載されてきました。しかし、医療者に求められる修得すべき能力の複雑性と医療現場での実践を考慮すると3つの領域は別々に存在する目標…ではなく、相互関係やそれらが統合されたものである必要があります。つまり、コンピテンシーはより包括的で現場で求められる能力を反映されなければならないと考えられています。

 コンピテンシー基盤型教育は医療者として備えるべき能力を包括的に表現するため、医学の加速度的進歩に応じて増加する膨大な学習コンテンツに比し、カリキュラム期間が限定されていたとしてもカリキュラム開発が可能となります。知識や技能として無視されてしまいがちな学習コンテンツ…例えば、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーション能力、省察能力なども確実に考慮に入れることが可能になります。そして、社会への説明責任や質保証、透明性の担保も可能となります。

 コンピテンシー基盤型教育においては学習者評価が特に重要視されます。つまり、カリキュラムにおいては評価の妥当性をより高めることが求められ、実践現場での能力をしっかりと評価することが求められます。基準となる能力を明確に示し、それらが確実に修得されたことを証明することが求められることになります。

Harden,R.M., Crosby, J.R., Davis,M.H., Med Teach. 1999. 21, 7-14.