日本脂質栄養学会

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オメガ博士による最新論文紹介

オメガ3系脂肪酸のサプリメントで犬の毛艶がよくなる

オメガ博士

最近は、ペットも家族の一員として、かけがえのない存在になっています。 屋内での快適な生活や安定した食餌の摂取によって、ペットもヒトと同様、長生きするようになりましたが、それに伴い、アレルギーや皮膚炎、認知機能の低下などのさまざまな疾患が増えているようです。 このような疾患を発症した場合、医療費、治療費も大きな問題の一つになります。 皮膚疾患では、以前の回でもオメガ3系脂肪酸と子どものアトピー性皮膚炎の関係が紹介されており、血中アラキドン酸レベルや出生前の母親の食事の脂肪酸バランスにまでさかのぼるなど、日々の食生活が大きく影響しているようです。これは、ヒトだけの問題ではなく、イヌでも似たようなことが起こっています。

オメガ3系必須脂肪酸サプリメント(Agepi® ω3)が、被毛の状態が悪い犬の臨床症状、
赤血球膜中脂肪酸濃度、毛並み、皮膚に及ぼす影響をみた前向き無作為二重盲検プラセボ対照比較試験

皮膚は、体の最大の器官で、日々の摂取している栄養素によって、被毛の状態や皮膚の滑らかさ、バリア機能に大きく影響します。イヌもヒトと同様、生体内で多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)が生成できない哺乳動物ですが、これら多価不飽和脂肪酸が欠乏すると、被毛はぼさぼさして毛艶がなくなり、表皮のターンオーバーが増加して皮膚が変色し、うろこ状になったり、皮脂腺が肥大するといった報告があります1)

今回紹介する実験では、ノミなどの寄生虫を持っていない、毛並みが悪い以外は健康なイヌn=24をランダムに対照群とオメガ3系脂肪酸投与群に割り当て、毛艶の変化や、赤血球のオメガ3系脂肪酸の取り込みを観察しました。 普段のフードは、両群とも同じ一般的なものを与えられ、投与群には、オメガ3系脂肪酸を1日にEPA 160 mg + DHA 100 mg、90日間毎日与えました。 皮膚や毛艶の観察は、投与終了後も90日間(計180日間)続けられました。 サプリメント効果は、脂漏性スコアリング指数で臭いや痒み、皮膚の状態などをスコア化して評価されました。

図はイヌの皮膚状態の総合的な臨床結果です。サプリメントの投与開始から30日以降、皮膚や被毛のターンオーバーによる時間差はありますが、投与群で皮膚の状態が良好になっていることが確認されました(60日から120日にかけて)。 しかし、投与が終了するとその状態は維持されることなくゆっくり悪化し、対照群と同等のサプリメント前の状態に戻ってしまいます(150日から180日にかけて)。 皮膚や被毛を良好な状態のまま維持するには、継続的なオメガ3系脂肪酸の摂取が必要です。また、赤血球のオメガ3系脂肪酸レベルの反応は皮膚や被毛の変化よりも早く、投与後すぐにEPAやDHAが上昇し、投与が終了すると対照群と同等にまで低下しました. また、EPAとDHAの上昇に伴い、アラキドン酸は低下しました。 これより、オメガ3系脂肪酸の摂取は、アラキドン酸由来の炎症性エイコサノイドの産生を減少させ、アトピー性皮膚炎などの疾患を緩和させることも期待できるとしています。

実験期間中の皮膚状態の臨床スコア

A prospective, randomized, double blind, placebo-controlled evaluation of the effects of an n-3 essential fatty acids supplement (Agepi® ω3) on clinical signs, and fatty acid concentrations in the erythrocyte membrane, hair shafts and skin surface of dogs with poor quality coats.
(Combarros D, et al. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids, 159,102140, 2020.)

オメガ博士

他にも、イヌにオメガ3系脂肪酸を12週間サプリメントすることで、痒みや被毛の状態、生活の質が改善され、アトピー性皮膚炎の治療薬の減量につながったという報告もあります2, 3)

私たちの研究室でも数十種類のドッグフードを分析してきましたが、オメガ6/オメガ3比の高い物、特にリノール酸の含有量が高いのが目立ちます。 原料コストの削減やペットフードの規定が低くいことが要因だと思われます。 残念なことに、ペットフードはヒトの食品でないことから、品質や衛生基準を遵守する法律が適用されないので、当然、脂肪酸の組成まで言及されていません。 毛艶の改善を謳った商品でも、組成に大きなばらつきがあるため、オーナーが適切なフードを選択しにくい状況です4)

虚血再灌流障害は、死因第2位の心疾患の治療で起こり得る障害です。しかし、虚血発症前からDHAを摂取することが有効である報告です。日ごろからのオメガ3脂肪酸を摂取することが望まれますね。

参考文献
1) Dietary fats and the skin and coat of dogs. Kirby NA, et al. J Am Vet Med Assoc. 2007; 230: 1641-1644.
2) Randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial measuring the effect of a dietetic food on dermatologic scoring and pruritus in dogs with atopic dermatitis. de Santiago MS, et al. BMC Vet Res. 2021; 17: 354.
→ ドッグフード中のオメガ6:3比バランス、ドッグフードはオメガ3系脂肪酸欠乏食
3) Evaluation of cyclosporine-sparing effects of polyunsaturated fatty acids in the treatment of canine atopic dermatitis. Müller MR, et al. Vet J. 2016; 210: 77-81.
→ 治療薬の減量
4) Evaluation of marketing claims, ingredients, and nutrient profiles of over-the-counter diets marketed for skin and coat health of dogs. Johnson LN, et al. J Am Vet Med Assoc. 2015; 246: 1334-1338.
→ 毛艶の改善を謳った商品の成分について

2023年5月2日
(原馬明子、守口 徹:麻布大学)

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