意識障害症例に遭遇した場合、診断の前にバイタルを安定化させる。以下のアルゴリズムで対応する。
呼吸循環管理:GCSが8点以上 あるいは pCO2>45 torrならば挿管し、SaO2を90%以上、pCO2を40torr未満、平均血圧を70mmHg以上に保つ。
迅速血糖測定にて45mg/dL未満ならばブドウ糖投与し、電解質や血液ガス(動脈血色調、pH、PO2、PCO2、鮮赤色の場合carboxyhemoglobin)、腎機能、肝機能、甲状腺機能、血液浸透圧、血算、凝固能、薬毒物スクリーニング(尿・血液)、心電図を検索する。
神経学的所見:病歴聴取(発症機転、頭痛・うつ・局所的麻痺・めまいの有無、外傷、既往歴、精神科歴、内服薬、職業、病原体との接触等)、身体所見(バイタル、外傷の有無、急性・慢性疾患の有無、薬物中毒の徴、頚部硬直)、神経学的所見(眼球・瞳孔、言語反応、呼吸、眼球頭位反応、眼球前庭反射、角膜反射、運動系反応、伸長反射、筋トーヌス等)
頭蓋内圧亢進や脳ヘルニアが示唆される場合、過換気およびマンニトール 0.5 - 1.0 g/kgを投与。
サイアミン(Vitamin B1)100mg 静注後、血糖が40mg/dL未満ならば、60mg/dL以上になるまでブドウ糖静注(意識障害の原因としてヴェルニッケ脳症は稀であるが、慢性アルコール依存症では考えておく必要あり。ブドウ糖のみの投与では、サイアミンの需要が増え病態が悪化する)。
オピオイド過剰が示唆される場合ナロキソン 0.4 - 2.0 mg 静注を 3分ごと あるいは 0.8mg/kg/hr持続静注。
ベンゾジアゼピン過剰が示唆される場合フルマゼニルを単回投与 0.2 mg静注、効果は 2分以内に発現するので、無効時、 最大量 1mgまで増量可能。フルマゼニルの半減期は 50分なので、フルマゼニル投与後も呼吸の観察を継続する。なお、三環系抗うつ薬併用時にけいれんの危険があるのでルーチン投与は行わない。
薬毒物中毒が疑われる場合、挿管後、活性炭を胃内に投与(薬毒物内服後1時間以内であれば有効性が高い)。
器質的疾患が疑われる場合、頭部や頚部のCT。
詳細な臨床経過の聴取と身体所見。
脳波や腰椎穿刺(髄液細胞、グラム染色、糖、蛋白質、培養)、MRIの検討。
他の対処
けいれんを止める。
感染症を治療する。発熱があれば血液培養を必ず検索する。老人や免疫不全症例では発熱がないこともあり、意識障害の原因として感染症を必ず考えておく。
酸塩基バランスを補正する。
体温を正常化させる。
抗コリン剤(やγ-ヒドロキシ酪酸?)過剰が示唆される場合フィゾスチグミン(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)を投与。
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(有機リン等)過剰が示唆される場合抗コリン剤を投与。
メタノールやエチレングリコール過剰が示唆される場合ホメピゾールを投与。
シアン化物過剰が示唆される場合ヒドロキソコバラミン(hydroxocobalamin: OHCbl or B12a)を投与。
スルホニルウレア血糖降下剤による低血糖の場合オクトレオチド(ソマトスタチン模倣オクタベプチド:ソマトスタチンよりも成長ホルモン、グルカゴン、インスリン阻害作用が強い)。
心因性無反応も考えておく。