筋緊張
意識障害での筋緊張の評価は重要である。
評価部位:頚部(頭部を優しく両手で摑み、前後左右に動かす)、上肢(手を握り、肩・肘・手関節を動かす)、下肢(それぞれの下腿を持ち上げ、股・膝・足関節を動かす)
髄膜刺激徴候:項部硬直やKernig徴候(背臥位で、股関節を90度屈曲し、下腿を挙上していくと、途中で抵抗感があり膝関節が自動的に屈曲)があれば、髄膜炎やクモ膜下出血を疑う。但し、深昏睡で全身の筋緊張が低下し、深部腱反射も消失している場合、現れないことがある。
全身性の筋緊張は、パーキンソン病やパーキンソニズムを呈する疾患、悪性症候群や悪性高熱症で診られる。
睡眠や意識障害のある場合は、通常、筋緊張は低下する。
反射
筋伸長反射は、意識障害で亢進するが、深昏睡となると消失する。
表在反射は、意識障害の進行と共に消失するが、軽い意識障害で、Babinski徴候や前頭葉リリース反射(原始反射:眉間反射、口とがらし反射、吸すい反射、手掌おとがい反射)が現れることがあるが、加齢でも認められることがあるので注意する。
把握反射は、両側前頭葉障害を示唆する。把握は運動野や下頭頂小葉連合野が障害されると消失する
疼痛刺激による運動系の反応
声掛けや軽い揺さぶりに反応しない意識障害のある場合、疼痛刺激による運動系の反応を診る。組織のタメージを起こさない下図の部位を刺激する。
疼痛刺激による運動系の反応は、正常反応、病的反応、反応消失に分かれる。適切な反応は、逃避(痛みを払いのける、痛みを避けようとする)と顔をしかめる、体動増加などで、これらが見られた場合、脊髄や脳幹の知覚と運動の連携が保持されていることを示している。左右の刺激により、片側の運動系反応が消失している場合、知覚あるいは運動の障害が存在する。顔面をしかめる反応があり、血圧上昇や散瞳があり、片側の麻痺があれば、運動系の麻痺が示唆される。両側の逃避が消失し、顔のしかめる反応が存在すれば、橋以下の両側の運動系障害を示唆する。
除皮質硬直では、両側前頭葉から中脳までの病変で観察され、代謝性脳症や中毒、両側大脳半球を障害する外傷などが原因である。除脳硬直は、前庭姿勢反射が前脳からのコントロールが消失することで起こると考えられ、上位脳幹(実験動物では中脳の上丘と下丘の間の切断)の病変で発症することが多い。除脳硬直に眼球運動障害を伴うことも上位脳幹障害を示唆している。しかし、過換気症候群や両側大脳半球の障害でも観察されることがあり、他の神経学的所見と共に総合的に病変部を検討する必要がある。
上肢伸展と下肢の弛緩性あるいは軽度屈曲は、前庭神経核のある下位脳幹障害でおこる。中脳下部と橋上部は、上肢伸展姿勢に重要である。
上の左図は大まかな病変部を示している。Aでは、右大脳半球や間脳の障害により左半身の麻痺があるが、右半身は意図的な運動を行うことが可能であり、疼痛部位に手を持って行き時に払いのけたりする。両側大脳半球が障害された場合や間脳と中脳境界部の障害では、両側の上肢の肘関節と手関節および手指関節での屈曲と上肢内転、下肢の伸展と内転、すなわち、除皮質硬直を呈し、中脳以下に病変が存在すると、両側の上肢下肢の伸展と手関節の回内する除脳硬直となる。