頭部を左へ回旋したときは、左外側半規管内で内リンパ流動は向膨大部流となり、左眼球内直筋と右眼球外直筋が収縮。右外側半規管内で内リンパ流動は反膨大部流となり、右内直筋および左外直筋への刺激はほとんどない。両眼球は右へゆっくり偏倚し、その後左側に急速に動く眼振が起こる。
(参考)三半規管と眼球運動との関連
頭部を動かした場合、内リンパ流の方向に眼球は動く。
Ewald’s 3 Laws (J.R. Ewald (2/14/1855-7/22/1921): German physiologist
半規管に生じる内リンパ流動とこれにより生じる眼球運動(眼振)の方向に関する法則。
①眼球と頭部の運動は、半規管の平面で起こる。眼球運動(眼振)の軸は半規管の解剖学的軸と内リンパ流動の向きに一致する。
②外側半規管では向膨大部の内リンパ流動は刺激として、反膨大部流は抑制として働く。
③垂直半規管ではその逆となる。
Flourensの内リンパ流動説 Marie Jean Pierre Flourens (13 April 1794 – 6 December 1867): French physiologist 各半規管が興奮あるいは抑制された場合に生じる眼球運動の方向に関する法則
①外側半規管が刺激され興奮した場合、同側眼の内直筋と対側眼の外直筋が収縮し、眼球は反対側に偏倚する(緩徐相)。その後眼球は反対方向に急速に動き(急速相)、正中眼位に復帰する。
②左後半規管が刺激され興奮した場合、同側眼の上斜筋と対側眼の下直筋が収縮する結果、眼球は反時計方向に回旋し、下方に偏倚する(緩徐相)。その後眼球は急速に時計方向および上方に動き(急速相)、正中眼位に復帰する。
③左前半規管が刺激され興奮した場合、同側眼の上直筋と反対眼の下斜筋が収縮する結果、眼球は上方に偏倚し、反時計方向に回旋する(緩徐相)。その後眼球は急速に時計方向および下方に動き(急速相)、正中眼位に復帰する。
眼球前庭反射
A:健常人あるいは脳幹機能正常な代謝性脳症
B:右外側橋病変:頭部左回旋時に、右眼球外転と左眼球内転が出来ない。他の動きは保持。
C:両側内側縦束(MLF)病変:頭部の左回旋および右回旋で、両側眼球の内転が出来ない。他の動きは保持。
D:right one and half syndrome:右傍正中部橋網様体(PPRF)、右外転神経核、両側MLFの病変により、頭部の右回旋時に左眼球の外転は可能であるが、右眼球の内転は出来ない。頭部の左回旋時には右眼球の外転および左眼球の内転も出来ない。
E:中脳梗塞:両側の動眼神経核と滑車神経核が障害され、両側の眼球外転運動のみ保持。C:両側MLF病変と同じ外眼筋麻痺を呈している。中脳梗塞では対光反射が障害されているが、両側MLF病変では対光反射は保持されている。