体温


高体温および低体温は、脳代謝を変化させ、意識障害を引き起こす。脳の温度は、体温および脳自身の代謝活性に影響を受ける。通常、血液温度より0.4℃高く、状況により4~5℃の範囲に保たれている。41℃までは、脳の各細胞の機能は保たれると考えられているが、42℃以上(heat stroke 熱射病)になると、意識障害を引き起こす。体温が低い場合32.2℃以上であれば、意識は保たれるが、28~32.2℃になると呼吸および脈拍が遅くなり、意識が混濁する。血圧は下がり、不整脈も起こりうる。28℃を下回れば、呼吸は止まり、瞳孔は反応しなくなり、脳波はフラットになる。肺浮腫あるいは心室性不整脈が生ずる。

高体温

感染症、熱中症、悪性症候群(向精神薬の副作用)、悪性高熱症(麻酔薬の副作用)、セロトニン症候群、抗コリン作動薬中毒、ヘロイン中毒、低ナトリウム血症、頭蓋内圧亢進、橋出血などが原因。

視索前野が体温調節中枢であり、視床下部背内側部や延髄縫線核を介し、脊髄中間外側核(交感神経)から褐色脂肪組織熱産生や皮膚血管収縮、脊髄前角から筋収縮(ふるえ熱産生)を引き起こす。感染があると免疫系が活性化され、サイトカイン瑠偉が血中で産生され、内皮細胞内でCOX2などプロスタグランジン合成酵素群が発現、プロスタグランジンE2が産生され、視索前野の神経細胞プロスタグランジンEP3受容体に作用する。EP3受容体はGTP結合タンパク質で、抑制性に働く。プロスタグランジンEP3受容体のある神経細胞はGABA作動性抑制性神経細胞であり、プロスタグランジンE2産生により脱抑制が起こり、視床下部背内側部や延髄縫線核を活性化し、発熱する。なお、この場合体温は42℃を超えることはない( ⇔ 熱射病)。

低体温

事故(慣例曝露)、視床下部障害(ヴェルニッケ脳症、腫瘍)、下垂体機能不全、副腎不全、甲状腺機能低下症、敗血症、薬物・アルコール中毒、低ナトリウム血症