多系統萎縮症
75歳 男性
主訴:ふらつき
既往歴・家族歴:特記すべきものなし
現病歴:64歳頃より、飲酒後ふらつきが強く病院受診した。
身体所見:失調性歩行障害、失調性構語障害、小脳性眼球運動障害を認めた。軽度の筋強剛や無動、姿勢保持障害も認められた。振戦はなし。他にレム期睡眠行動異常症およびゲルハート症候群(睡眠中の吸気時に高調の喘鳴:後輪状披裂筋麻痺による声帯外転障害⇒声門閉鎖による突然死の危険あり)が存在した。認知機能は保持。
画像所見:被殻、中小脳脚、橋、および小脳の萎縮。被殻後外側縁の線状病変(磁化率強調画像:susceptibility-weighted imaging)。橋底部の十字サイン(hot cross bun sign)(プロトン密度強調画像:proton density-weighted imaging)、中小脳脚の信号変化を認める。
経過:食物の誤飲が多くなり,肺炎を繰り返すようになり、肺炎から呼吸不全となり死亡.
病理所見
マクロ:
小脳皮質、中小脳脚、橋底部、下オリーブ核は萎縮し、被殻は萎縮して茶褐色に変色。黒質と青斑核は脱色素。
ミクロ
被殻背外側、黒質、青斑核、プルキンエ細胞、橋核、下オリーブ核、迷走神経背側覚、脊髄側核の神経細胞脱落・グリオーシスが顕著に認められる。同部の白質を含め、大脳半球の白質に変性を認め、乏突起膠細胞胞体内には火炎状ないし鎌状の嗜銀性封入体(GCI: glial cytoplasmic inclusions)を認める。このGCIは、リン酸化αシヌクレイン陽性である。リン酸化αシヌクレイン陽性封入体は、グリア細胞核内(GNI: glial nuclear inclusions)や、神経細胞の胞体内(NCI: neuronal cytoplasmic inclusions)や核内(NNI: neuronal nuclear inclusions)、ニューロピルにも観察される。