アルツハイマー型認知症 Bodian
60歳 男性
主訴:進行性の健忘,着衣困難
既往歴・家族歴:特記すべきものなし
現病歴:15年前よりときどき設計の見積もりを間違えるようになった.10年前会社経営がうまくいかなくなり倒産.以後一人で大工をしていた.このころより消極的となり,現場に道具を忘れたりするようになった.8年前より新聞などをあまり読まなくなり,物事に対して関心がなくなってきた.6年前より着衣がうまくできず,服の前後を間違えたりするようになってきた.大酒家で,日本酒3合/日を30年間飲んでいる.食事は普通にとっている.
身体所見:血圧140/90mmHg,脈拍80/分整,体温36℃.体格中等,栄養良,貧血,黄疸,クモ状血管腫,皮膚や角膜の色素沈着,甲状腺腫,頚部血管雑音,胸部異常はない.手掌紅斑がある.肝2横指触知,弾性硬,辺縁鈍,平滑.脾は触知しない.浮腫なし.意識清明.精神やや無欲状,多幸的.見当識障害があり,言語はほぼ正常,脳神経系は眼球運動を含め正常,運動系正常,深部腱反射正常,アキレス腱反射弛緩相の遅延,病的反射はない.協調運動,感覚,歩行は正常.不随意運動,髄膜刺激症候はない.半側視空間失認なし,二点同時刺激で無視なし,構成失行あり,着衣失行あり,地誌的失認あり,標準失語症検査で漢字の書字障害,標準失行テストで軽度の上肢の観念運動失行がある.WAIS(Wechsler知能テスト)動作性IQ61,言語性IQ82,長谷川式簡易知能評価スケール13.5/32.5点と低下.
経過:症状は緩徐に進行.2年前に転倒し,左大腿骨頚部骨折後,寝たきりの状態が多くなっていた.尿路感染症を繰り返し,最終的に敗血症で死亡.