クロイツフェルトヤコブ病 PrP



59歳 女性

主訴:歩行障害

既往歴・家族歴:特記すべきものなし

現病歴:8月ごろから全身倦怠感,食欲低下出現.9月初旬より両下肢のしびれ感出現,階段の昇降が困難となった.この頃からしゃべるのが遅くなり,ぼんやりしてきたといわれていた.10月はじめまでは身の回りのことはなんとか可能であった.同月10日頃よりふらつき歩行となり進行性に憎悪.20日頃には独歩困難となり,また,四肢の不規則な震えも出現.目のかすみを訴えるようになった.同年11月2日入院.意識はほぼ清明,やや無欲状,見当識正常,視空間失認,観念運動失行,失書,失計算,記銘力低下がある.長谷川式簡易知能評価スケール24.5/32.5点.会話は可能であるが発語までに時間がかかる.軽度構音障害,視力低下がある.視野,眼球運動,瞳孔,眼底,他の脳神経は正常.四肢筋トーヌスは変動性で低下しているときもあるが,他動的に動かそうとすると抵抗するいわゆるGegenhaltenを認める.筋力は四肢,体幹筋ともに4/5と低下.深部腱反射は正常,病的反射はない.歩行は小股で遅く,すくみ足傾向,歩行時に恐怖心があり,すぐものに捕まろうとする.捕まって横歩きは可能.継足歩行は不能.Romberg徴候はない.四肢に協調運動障害がある.感覚は下肢のしびれ感以外正常,全身にミオクローヌスが間欠的にみられ,刺激すると憎悪する.易刺激性がある.髄膜刺激症候はない.

入院時検査成績:検尿正常.血算正常.生化学検査正常.

髄液所見;細胞数3/3(異常細胞なし),蛋白30mg/dl,糖60mg/dl

入院後経過:11月11日には失見当識が明らかになり,長谷川式スコアも12と低下.徐々に嚥下障害も出現,構音障害も顕著になる.食欲低下.簡単な従命にも時間がかかるようになる.会話にさいして保続傾向も出現.11月下旬には傾眠状態となり,皮質盲の状態.12月上旬には開眼はしていても呼名にもまったく反応のない失外套症候群となる.次第に徐皮質硬直肢位出現.ミオクローヌス,Gegenhalten持続.人形の目現象あり.翌年3月には対光反射も消失.ミオクローヌス減少.四肢屈曲拘縮状態となる.翌々年1月4日肺炎にて死亡.