細菌性髄膜炎 Masson



72歳 女性

主訴: 発熱嘔吐を伴う意識障害

既往歴:10年前より糖尿病.コントロールは不良.

現病歴:入院1週間前から食欲不振,全身倦怠感が出現し,近医にて感冒として治療を受けていた.4日前より発熱,傾眠,尿便失禁が出現.入院前日に嘔吐があり,呼んでも頷くだけとなったため,緊急入院した.

入院時現症: 体温38.7℃,血圧82/60mmHg,脈拍90/分整,栄養不良,皮膚乾燥.貧血や黄疸はない.胸部,腹部には異常所見がない.意識は昏迷状態,眼球位置,眼球運動,瞳孔,眼底は正常.四肢には明らかな運動障害はなく,筋トーヌスは正常.深部腱反射は全般的に低下.病的反射や不随意運動,痛覚に対する反応の左右差はない.後部硬直は軽度陽性,Kernig徴候(±).

検査成績:尿;蛋白(+),糖(3+),沈渣に白血球多数.

末梢血;白血球11300,Ht36%,血小板21×104.血沈78mm/時,CRP(5+)

生化学;総蛋白6.3g/dl,Alb3.4g/dl,GOT48IU/l,GPT35IU/l,総コレステロール133mg/dl,BUN35mg/dl,クレアチニン1.3mg/dl,血糖183mg/dl,電解質正常,免疫グロブリン正常,CEA<2.5

髄液所見;初圧120mmH2O,軽度混濁,細胞数1108/3(N:L=8:2),蛋白83mg/dl,糖45mg/dl

胸腹部単純X線正常,心電図正常,頭部X線CTは脳萎縮を認める以外正常.

脳波;δ波からθ波が主体の汎性徐波.ツ反疑陽性.

経過:直ちに,セフォチアム,水性ペニシリンを開始し,糖尿病コントロールのためインシュリンを使用.しかし,症状の改善は認められず意識障害は持続,敗血症性ショックとなり心肺蘇生を施行するも死亡.髄液培養及び血液培養より多剤耐性の緑膿菌が検出された.