交通科学学会の理念

日本交通科学学会は1962年(昭和37年)に設立された交通科学協議会を引き継ぐ学術団体です。発足当時は戦後の復興から経済成長へと続く流れとともに交通事故件数もうなぎ登りの上昇を示し、死亡者数の激増から正に交通戦争と称された時代でした。そのような状況にあって交通科学に造詣の深い工学、医学、行政などの専門家が相集って交通安全を目的とする学際的な活動と広報活動などを開始したわけです。

そして、時代は昭和から平成に移ると交通事故による死亡者数はようやく減少に転じ、2020年(令和2年)には年間死亡者数(24時間以内)が遂に3000人を割ったことが報じられました。しかし、この間に我が国の総人口は2008年(平成20年)を境に減少に転じ、その時点での高齢化率(65歳以上人口の占める割合)22%は、2050年には38%へと上昇するであろうとされ、我が国の高齢化は一段と進む状況となっています。

このような背景にあって2022年(令和4年)になされた科学技術・イノベーション基本法の改正では“総合知”が謳われました。今や、多発する激甚災害、少子高齢化、地方の過疎化などと多岐にわたる難しい問題を解決して行かねばなりません。そのためには自然科学のみならず人文・社会科学も含めた多様な知恵を結集し、そのような総合知から新たな創造へと飛躍することが求められます。日本交通科学学会を構成する会員は既に半世紀以上にわたって斯界におけるこのような学際的な実践をしてきたことになります。

そこで、このような方法論の重要性と、研究者による発信媒体の一層の充実とに鑑みて、学術刊行物として2001年(平成13年)より日本交通科学協議会会誌を発刊しました。それは2013年(平成25年)の日本交通科学学会への名称変更とともに、日本交通科学学会誌となって今日に至っています。国民の3~4割を占める65歳以上の高齢者も参加できる安全で安心な交通社会の維持・発展は、将来にわたる我が国に必須の条件です。日本交通科学学会は工学、医学、行政などの専門家による総合知を以て、交通社会における人々の安寧と国の発展に寄与する活動をこれからも大いに展開し続けて行く所存です。

(更新日:2024年06月27日)