ミノキシジルの副作用
AGA治療に有効な発毛成分である「ミノキシジル」の使用で起こり得る副作用は、次の通り。
ミノキシジルの主な副作用 |
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重篤な副作用として報告されているのが循環器疾患だ。ミノキシジルには血流を良くする働きがあるが、心臓の収縮に重要な冠動脈も弛緩させてしまう。心臓への血流量が落ちることで、次第に酸素や栄養が不足して肺にも負担がかかることになる。
不整脈や動悸、胸痛の他にも狭心症や呼吸不全などが起こることもあり、全てミノキシジルが心臓の収縮に与える悪影響が原因。
循環機能の悪化の他にも重大な副作用を起こすことがある。腎性全身線維症による腎不全や皮膚の硬化、高カリウム血症、多臓器不全など重い副作用を伴う場合もあるのだ。
ミノキシジル内服薬・外用薬の副作用の違い
ミノキシジル配合のAGA治療薬には、タブレットなどの内服薬(飲む薬)、ローションタイプの外用薬(塗る薬)の2種類がある。ただし、国内で承認されているミノキシジル有効成分とするAGA治療薬は、「外用薬のみ」。頭皮に塗り込むローションタイプが主となっている。
元々、ミノキシジルは1960年代に現在のファイザー社(当時はアップジョン社)が高血圧患者の降圧剤として開発した経口の治療薬「ロニテン」の有効成分であった。本剤は血管を拡張して血圧を下げるための薬だが、投与された患者に副作用として体毛の増加が認められたため、その後は発毛効果のある内服薬として使用されるようになった。
ミノキシジルの内服薬「ロニテン」には様々な副作用があった。そのため、ミノキシジルを有効成分とするロニテンやミニタブなどのジェネリック内服薬を承認している国は存在しない。現在、高血圧の治療薬としても使用されていない。
1980年代には、同社より副作用のリスクの少ない2%のミノキシジル外用薬として「ロゲイン」が発売された。
日本では大正製薬の「リアップ」などが国の承認を得て発売されている。現在、内服薬のミノキシジル製品は国内未承認であり、海外でも国内認可を受けている国はない。AGA専門クリニックや皮膚科で処方される治療薬は基本的に外用薬となる。
外用薬の重篤な副作用のリスクは、内服薬に比べて格段に低いと言える。主な副作用は頭皮のかぶれであるが、市販の外用薬であるリアップの使用で死亡例も出ている。
薬局で購入する場合には、薬剤師の説明が必要になっている。厚生労働省でも販売店に対し購入者の既往症などを確認するよう要請している。
ミノキシジルと循環器系の副作用との関連性については、米国において行われた約20,000例の疫学調査で関連がないとの結果が得られており、直ちにミノキシジルとの関係を疑うことは難しいと考えられる。しかしながら、報告された症例は狭心症、高血圧等循環器系の既往のある者が多かったことから、「高血圧、低血圧で現在治療を受けている人」及び「狭心症等、心臓に障害のある人」に対する安全使用の徹底を図るため、以下のような対応を行うこととした。
(1)(社)日本薬剤師会及び各都道府県を通じ、薬局等において購入者に対し既往歴等の確認を行い販売するよう指導を徹底する。
(2) 製造業者に対し、外箱の表示等を改善し、狭心症、高血圧等の既往のある者は、購入前に医師・薬剤師に相談するよう注意喚起を徹底する。(引用:厚生労働省 報道発表資料「ミノキシジルの安全使用の徹底について 2.対応策」)
内服薬だけでなく外用薬であっても、循環器系(心臓や肺)に不安がある場合には医師や薬剤師への相談が必須となる。
ミノキシジルはED治療薬との併用で副作用が出る
AGA(男性型脱毛症)治療薬、ED(勃起不全・勃起障害)治療薬を併用することで副作用が出るリスクが高まる。
ED治療薬として有名な「バイアグラ」の主成分であるシルデナフィルには、ミノキシジル同様に血管拡張により血流を改善する作用がある。そのため、血圧低下の副作用も報告されているのだ。
双方に血圧低下など副作用のリスクがあるため、飲み合わせは控えるべき。ミノキシジルやED治療薬の副作用で急激に血圧が低下することにより、めまいやふらつきの症状により倒れる恐れもある。
ミノキシジルの副作用としてED(勃起不全)や性欲減退が報告されている。薬局でAGAの外用薬のリアップなどを購入する際には、ミノキシジルを使用していることを薬剤師に伝え、併用の際の副作用について確認するべき。
ミノキシジルと併用すると副作用が出る薬には、ED治療薬だけでなく鎮痛薬などの成分である「イブプロフェン」もある。ミノキシジルの血圧降下は血液をサラサラにする作用があるから。
イブプロフェンとの飲み合わせにより血管が緩みっぱなしなることで、血流が悪化し、体全体に必要な酸素や栄養を送れなくなるという逆効果の状況となる。
ミノキシジル単体の使用であっても血圧低下などの副作用のリスクが存在している。ED治療薬や鎮痛薬など血圧に作用する薬の併用により、さらに重篤な副作用を引き起こす可能性が高まる。AGA治療薬とED治療薬など飲み合わせの悪い薬を一緒に使用したい場合には、医師や薬剤師への相談が必須となる。
ミノキシジルを有効成分とするAGA外用薬の成分
最も知名度のあるAGA治療薬と言えば、日本では大正製薬から出ている外用薬の「リアップ」だろう。
「リアップ」の成分
- ミノキシジル(5.0g)
- ピリドキシン塩酸塩(0.05g)
- トコフェロール酢酸エステル(0.08g)
- ℓ-メントール(0.3g)
- ジフェンヒドラミン塩酸塩(0.1g)
- グリチルレチン酸(0.1g)
- ヒノキチオール(0.05g)
現在は、ほとんどのAGAの外用薬でミノキシジルが5%配合されている。外用薬であっても人によっては内服薬と同じような副作用を起こす人もいるため、厚生労働省が5%に制限しているのだ。
ミノキシジル以外の成分では、皮脂の分泌、酸化を抑え、頭皮の炎症を抑える効果がある成分のピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、ℓ-メントールを配合。
添加物としてL-アルギニン、グリシン、1,3-ブチレングリコール、ジブチルヒドロキシトルエン、リン酸、エタノールが配合され、血管拡張による血流の促進、抗酸化剤、安定剤などとして作用している。
ミノキシジルの効き目
ミノキシジルは次のような働きで発毛促進している。
血管を拡張して血流を改善 | 脱毛スイッチが入ってしまった毛根や収縮した血管の再生を促し細胞へ栄養を届ける |
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毛母細胞の死滅を抑制 | 髪の毛が成長期から退行期へ移行するのを抑制し、脱毛を予防、発毛を促進する |
育毛・発毛を促進 | 育毛・発毛を促進する発毛シグナルを算出する |
AGA(男性型脱毛症)を発症すると、脱毛症の元凶となる成分であるジヒドロテストステロン(DHT)にスイッチが入ってしまう。そのため、毛根から髪へ栄養を届けるための血管が次第に収縮し、頭皮の血行も悪化していく。
ミノキシジルは、脱毛スイッチの入った毛根や血管を再生して、成長しきらない髪の毛の脱毛を予防する。さらには育毛・発毛に必要な発毛シグナル「インスリン様成長因子1(IGF-1)」、「血管内皮細胞増殖因子(VEGF)」の産出を促進するのだ。
ミノキシジルの効き目は、通常、使用後1か月ほどで現れる「今まで以上の脱毛量」により気付く。その後は少しずつ毛髪が増加し、発毛効果を感じられるように。
ミノキシジル使用後、以下のタイミングで効き目が現れてくる。
- 初めての使用から1か月程度で初期脱毛が始まる
- 3週間程度で初期脱毛がおさまる
- 使用後3か月くらいで体毛が濃くなってくる
- 使用後4か月〜半年くらいで髪が発毛効果を感じるように
ミノキシジル使用後、1か月ほどで朝起きて枕に抜け毛がびっしりと付いていたら、それが効き目の合図だ。4か月ほど使用しても初期脱毛が現れない場合、ミノキシジルが効かない体質と理解し使用をやめるべきである。
ミノキシジルは、ミノタブなどの内服薬の方がリアップなどの外用薬より強い効き目がある。内服薬の場合、動脈の血管を拡張することで血流を良くして毛根へ栄養を届ける。
一方、外用薬は頭皮に浸透させることで毛細血管に作用するが、毛根に栄養を送るまでの効果がない。
外用薬で効き目を感じない場合は内服薬へ
内服薬の方が明らかな効き目があるものの、副作用のある薬であるため、初めはリアップなどの外用薬から始めるのが治療の基本。外用薬でも15%程度の人には効き目が現れるとも言われている。
外用薬を4か月ほど使用しても初期脱毛などの効き目が現れない場合に初めて内服薬に切り替えるのが、ミノキシジルの正しい使い方なのだ。
ミノキシジルの国内・国外ジェネリック
AGA治療用のミノキシジルジェネリックには次のような商品がある。
内服薬 | なし |
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外用薬 | スカルプD メディカルミノキ5(アンファー) |
リグロREX5(ロート製薬) |
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LABOMOヘアグロウミノキシ5(アートネイチャー) |
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ミノアップ(東和薬品) |
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リザレックコーワ(興和) |
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アロゲイン5(佐藤製薬) |
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カークランドロゲイン(カークランド・アメリカ) |
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ツゲイン(シプラ・インド) |
AGA治療としてのミノキシジルの内服薬に関しては、国内・国外通じて承認されている医薬品はない。そのため、ジェネリックも存在していない。クリニックで医師から処方されるミノキシジルタブレット(ミノタブ)も未承認薬であり、ジェネリックではない。
外用薬については、先発治療薬として日本のリアップがあり、国外ではロゲインがある。
リアップのジェネリックとして、アンファーのスカルプD、ロート製薬のリグロREX5、アートネイチャーのLABOMOヘアグロウミノキシ5、興和のリザレックコーワ、佐藤製薬のアロゲイン5など、多くの製薬会社から発売されている。
国外ではロゲインのジェネリックとして、アメリカのカークランド社のークランドロゲインや、インドのシプラ社のツゲインなど、いくつものAGA治療薬が存在する。
通販でミノキシジルを購入する際の注意点
通販でもミノキシジルを含む医薬品を購入することは可能。
頭皮に塗り込むタイプのミノキシジル外用薬であれば、国内通販サイトのAmazonや楽天でも買うことができる。ただし、薬剤師からの情報提供が義務となる第1類医薬品であるため、通常の商品を注文・購入するのとは手順が異なる。薬剤師との問診が完了しないと購入手続きに進むことができないのだ。この点ではインターネットを利用して診察を受けるオンライン処方と似ている。
個人輸入代行サイトを利用してミノキシジルを購入する場合には、問診などの手続きは必要ない。それだけに健康被害が出やすいというデメリットもある。ミノキシジルは心臓や肺、腎臓などに障害のある人が本来使えない薬であるが、個人輸入では誰もが簡単に買うことができるからだ。
海外の医薬品には偽物も存在することを考えると、個人輸入のミノキシジル購入には価格が安いということ以外にメリットは何もないと言えるだろう。
ミノキシジルの購入方法
ミノキシジル含有のAGA治療薬を購入する方法は3つある。
- AGA専門クリニック・皮膚科で処方:内服薬・外用薬
- オンライン診療で処方:内服薬・外用薬
- 国内の薬局で購入:外用薬
- 国内の通販サイトで購入:外用薬
- 海外の通販サイトで購入:内服薬・外用薬
ミノキシジルの入手方法として最も推奨されるのが、医師の処方箋による購入となる。未承認薬ではあるが、発毛効果のある内服のミノタブを処方するクリニックも多い。発毛には内服薬に頼るのがミノキシジルの効果を得るための近道となるからだ。
非認可の医薬品を医師が個人輸入して患者に処方することは違法行為とならない。医師が患者に対して副作用などについて説明し、患者の同意を得ることで合法的に未承認薬を処方することが可能となるのだ。
厚生労働省では日本皮膚科学会に対し、医師が国内未承認の発毛薬を処方する際に患者に対して未承認薬であることや安全性や品質・有効性が確立されていないことを説明するよう通達している。(厚生労働省・事務連絡「国内未承認のいわゆる発毛薬の服用が原因と考えられる健康被害の発生について」)
医師からの説明に同意することで処方せんが発行され薬を買うことが可能になる。AGA専門クリニックでは、ミノキシジルに加えて抜け毛を防止する効果のあるプロペシアやザガーロなどを処方するクリニックも多い。
クリニックに足を運ぶことが難しい場合には、オンライン処方をしてくれる所もある。インターネット以外にも電話による診察が可能な場合もある。診察が済めばミノキシジルなどの内服薬などを処方、宅配にて配送してくれる。
国内の薬局でもミノキシジルの外用薬を買うことが可能(内服薬の購入は不可)。ただし第1類医薬品となるため薬剤師からの情報提供が義務となる。国内通販の場合も同様に、薬剤師の問診が完了しないと購入手続きに進むことができない。この点ではどちらも同じ扱いとなる。
海外の通販サイトではミノキシジルの外用薬だけでなく内服薬も購入可能。ただし注意したいのが薬の真偽である。内服薬に関しては全てが未承認薬であるため、本物か偽物かの判断が難しい。
国内の大きな病院であれば、医薬品の品質をしっかりと検査しているため、品質は国内クリニックが扱っているものが上となる。薬局や国内通販サイトで買えるミノキシジル外用薬は、国内の大手製薬会社が販売しているため安心して使用できる。
海外のジェネリックは不純物が混入された偽物である可能性もある。国内の大手製薬会社の商品の方が安心して使用できるだろう。
ミノキシジルの価格
ミノキシジルの内服薬、外用薬の価格相場は次のようになっている。
購入方法 | 内服薬 | 外用薬 |
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病院処方 | 約8,000円〜10,000円 | 約6,000円〜8,000円 |
オンライン処方 | 約10,000円 | 約6,000円〜12,000円 |
国内通販・薬局で購入 | 販売なし | 約7,000円 |
個人輸入 | 約700円〜4,400円 | 約2,300円〜4,300円 |
ミノキシジルの内服薬は国内の薬局や通販サイトでは買うことができない。それ以外のAGA治療薬であれば、病院・オンライン処方・国内通販や薬局・個人輸入で手に入れることが可能。
医師の処方で購入できるミノキシジルは内服薬が多いこともあり、価格は高め。発毛を促進するミノキシジルの他にも脱毛予防の治療薬が処方されることもあり、その場合はさらに費用が追加となる。
外用薬にはジェネリックが存在することもあり、内服薬よりも価格が抑えられている。リアップなどの市販薬が国内の製薬会社からいくつも発売されているが、価格に大きな違いはない。
個人輸入で購入するミノキシジルは、内服薬・外用薬ともに国内で購入するものより大幅に安価となる。ただし、不純物が含まれており健康に重大な影響を与えるケースも報告されているため、適正価格で販売されている国内製品を選択するべきだ。