禁煙補助薬チャンピックス(バレニクリン)

禁煙補助薬「チャンピックス」の成分

禁煙を補助してくれる医薬品「チャンピックス」の成分は以下の通り。

有効成分(1錠中) 添加剤
チャンピックス錠 0.5mg
バレニクリン酒石酸塩 0.85mg

(バレニクリンとして 0.5mg)

結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール、トリアセチン

チャンピックス錠 1mg
バレニクリン酒石酸塩 1.71mg

(バレニクリンとして 1mg)

結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール、トリアセチン、青色 2 号

(参照:ファイザー インタビューフォーム「チャンピックス錠0.5ml1ml」


病院の禁煙外来で処方される「ニコチンを含まない禁煙補助薬」と言えば、2008年1月25日に国内承認されたファイザーの「チャンピックス錠」のみとなる。

 

チャンピックス錠には白色の0.5rと、淡青色の1rの2種類がある。主成分はそれぞれ「バレニクリン酒石酸塩 0.85mg(バレニクリンとして 0.5mg)」、「バレニクリン酒石酸塩 1.71mg(バレニクリンとして 1mg)」となっている。

 

有効成分のバレニクリンは、ファイザー社により開発されたニコチン性アセチルコリン受容体に対する部分作動薬である。脳内にあるα4β2 ニコチン受容体に作用することにより、少量のドパミンを放出して禁煙に伴うイライラ感や喫煙の欲求を軽減する作用がある。

 

同時に、喫煙によって脳内に送られるニコチンがニコチン性アセチルコリン受容体と結合するのを阻止する働きにより、喫煙の満足感を得にくくする。

 

チャンピックスの添加剤には、軽質無水ケイ酸などの安定剤や結合剤が使用されている。

 

チャンピックスの効き目

チャンピックスには2つの効き目がある。

  • ニコチン切れの不快感を軽減
  • 喫煙における満足感の低下

本来、喫煙により脳に届いたニコチンは、脳内に存在するニコチン受容体(α4β2 ニコチン受容体)と結びつくと、ドパミンが放出され快感を得られるという流れになる。ただし、結合したニコチンとニコチン受容体は喫煙終了後はすぐに離れて消えてしまう。その後、ドパミンが不足しニコチン切れの症状(離脱症状・禁断症状)が現れ、タバコを吸いたくなるのだ。

 

チャンピックスは、ニコチンの代わりにニコチン受容体と結びつき、少量のドパミンを出してニコチン切れのイライラやタバコを吸いたい欲求を軽減させる。さらには、ニコチンがニコチン受容体と結合するのを邪魔する働きもある。タバコを吸ってもおいしく感じないという状況を作り出すのだ。

 

禁煙外来での治療は、チャンピックスの12週にわたる服用にプラスし、その間での5回の診察が基本。最後まで治療を継続した場合、治療終了後9か月の時点で47.2%が禁煙継続中であったデータもある。(参照:厚生労働省「平成 28 年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成 29 年度調査)ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査報告書」

 

1回で治療を中断すれば、その後の禁煙継続率はわずか4.7%となるデータもある。治療を長く続けた方が禁煙の継続期間も長くなり、チャンピックスの効き目をより実感できるのだ。

 

チャンピックスの効果的な服用方法

チャンピックスは医師の指示に従い服用するのが、最も効き目を感じられる方法と言える。安全に使用するためにも必要なことだ。

 

メーカーであるファイザーでは通常、健康な成人の飲む量および回数を提示している。

服用の時期 薬剤名・1回量・1日の回数
第 1〜3 日目 チャンピックス錠0.5mg

1錠・1日1回食後

第 4〜7 日目 チャンピックス錠0.5mg

1錠・1 日 2 回朝夕食後

第 8 日目以降 チャンピックス錠1mg

1錠・1 日 2 回朝夕食後

初めの1週間は喫煙しながらチャンピックスを服用し、8日目から禁煙を開始する。

 

チャンピックスの禁煙補助による効果

チャンピックスの禁煙補助による効果の1つに健康増進がある。禁煙期間が長くなるほど症状の改善や将来の健康へとつながる。

禁煙期間 健康への効果
1〜2か月 慢性気管支炎(咳・痰・喘息)の改善
1年 肺機能の改善(軽・中度のCOPD)
2〜4年 心臓病のリスク低下
10〜15年 咽頭がんのリスクが喫煙者と比較し60%低下
10〜19年 肺がんのリスクが喫煙者と比較し70%低下
20年 喉頭がんのリスクが非喫煙者と同レベルに

(出典:ファイザー すぐ禁煙.jp「今度こそ、と思ったらあなたの近くに、禁煙外来」

 

チャンピックスは、「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助」を効能・効果として承認された医療用医薬品。継続的に治療すれば、禁煙に成功することは充分に可能だ。

 

禁煙による利点は経済面にもある。1箱500円のタバコを1日1箱吸う場合、1年で18万円を超えるお金を使うことになる。同様に10年吸い続ければ約180万円のマイナスとなるのだ。

 

逆に禁煙を継続することで、タバコにかけるお金を別の目的に使うことができる。貯金も可能になるだろう。

 

チャンピックスの副作用

チャンピックス服用による副作用には次のようなものがある。

  • 吐き気
  • 頭痛
  • 便秘
  • お腹の不調(便秘・痛み・はり)
  • めまい
  • 眠気
  • 精神的不安など

精神的不安の強い方がチャンピックスを服用することで症状が強く出ることがある。

 

めまいなどの副作用も報告されているため、自動車の運転は控えるべき。

 

吐き気を防止するには、食後コップ1杯の水かぬるま湯で不要すると良い。

 

ニコチンを含む禁煙補助薬の併用は禁止。

 

以下にあてはまる場合には服用に注意が必要。

  • 薬のアレルギーがある
  • 統合失調症・うつ病などの精神障害がある
  • 重度の腎臓障害がある
  • 服用中の薬がある
  • 妊娠中・授乳中である
  • 未成年者である

異常を感じた場合には、すぐに服用を中止して医師に相談する必要がある。

 

禁煙の副作用とまではいかないが、結果として体重が増える傾向にある。平均して2〜3sほどの増加がみられるため、禁煙に慣れてきた頃に食事や運動で減量を試みるのも良いだろう。

 

チャンピックスは通販可能か

チャンピックスは国内の通販サイト(Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなど)では取扱いはしていない。ただし、個人郵輸入代行サイトでは、外国語表記のパッケージで取扱われている。

 

海外通販であれば医師の診察を受けずにチャンピックスを手に入れることが可能。ただし、中には本物に似せた偽物も存在するため注意が必要。信頼できるサイトを利用することが大事となる。

 

チャンピックスの購入方法

チャンピックスの購入方法は3つ。

  • 禁煙外来に来院して処方してもらう
  • オンライン診療で薬を処方してもらう
  • 個人輸入で購入

禁煙外来のあるクリニックに来院、診察を受けた後に処方してもらうのが一般的なチャンピックスの購入方法となる。通常、5回の受診が必要となるため、通院の時間が取れない人はオンライン診療も選択肢の1つとなるだろう。途中で来院が面倒になり、治療を中断する心配もない。

 

国内のドラッグストアでも、店内にてチャンピックスが販売されることはない。医師の処方せんがない場合、薬局であっても購入は不可。

 

医師への相談なしでチャンピックスを購入したい場合、輸入代行サイトを利用して直接薬を注文する方法もある。ただし、海外から輸入した医薬品は副作用に対する補償やサポートの対象外となる。注文から発送までに時間がかかることからも、海外から薬を購入するのは、あまり得策とは言えないだろう。

 

チャンピックスの価格

チャンピックスの価格は入手する先により異なる。

 

クリニック

約17,000円(健康保険3割負担)

個人輸入代行

約37,000円

個人輸入代行サイトでは病院での禁煙治療費は6万円以上かかるとしている。実際には、以下の条件を満たせば健康保険が適用され、海外製品を個人輸入するより低コストで禁煙治療を受けられるのだ。

  1. 健康保険等が適用される「禁煙治療を受けるための要件」4点を満たし、医師がニコチン依存症の管理が必要であると認める場合
  2. 前回の治療の初回診療日から1年経過していること
  3. 健康保険等で禁煙治療が受けられる医療機関を受診すること

 

1.健康保険等が適用される「禁煙治療を受けるための要件」4点を満たす

禁煙治療で健康保険が適用されるには、以下の4点を満たし、医師からニコチン依存の管理が必要と認められる必要がある。

  1. ニコチン依存症の判定テスト(TDS)が5点以上
  2. 35歳以上の者については、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であるものであること※2。
  3. ただちに禁煙を始めたいと思っている
  4. 禁煙治療を受けることを文書で同意している

ニコチン依存症の判定テスト(TDS)とは、喫煙の依存度を診断するための10の質問で構成されている。「はい」を選択すれば1点が加算され、「いいえ」では0点となる。合計点が5点以上であれば、康保険等が適用される「禁煙治療を受けるための要件」の1つを満たすことになる。

 

前回の治療の初回診療日から1年経過している

前回の治療の初回診察日から1年経過しない場合には、健康保険の適用は対象外となり、自由診療となる。(参照:厚生労働省保険局医療課長 歯科医療管理官連名通知 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第1号(令和2年3月5日)

 

最終的なニコチン依存症の診断は医師が行うため、かかりつけの医師に相談してみると良いだろう。

 

健康保険等で禁煙治療が受けられる医療機関の受診

健康保険で禁煙治療を受けるには、まず保険診療が可能な最寄の医療機関を調べると良いだろう。チャンピックスでの禁煙治療には、基本的に5回の通院が必要となるため、知名度の高いクリニックよりも来院しやすい近所のクリニックが理想的となる。

 

受診の際には健康保険での禁煙治療が可能か確認することが必要。