東京警察病院 脳神経外科

                   脳神経外科後期研修プログラム

                                                              


(1) プログラムの目的と特徴

  脳神経外科専門医の資格を取得することを前提とした研修プログラムである。標準レベルの
 脳神経外科医ではなく、高い治療技術を持ち、患者にやさしく、患者に満足度の高い医療を
 提供できる、脳神経外科のプロフェッショナルを目指している人材を求めている。正しい知識と
 物の考え方、きめ細かい患者管理についての実践的な徹底した教育を通して、真に実力のある
 脳神経外科医を養成することを目的としている。
  脳神経外科の診療に必須となった神経放射線学的検査については、側頭骨CTからMRI、
 脳血管撮影まで非常に細かい読影を教育する。昨今軽視されがちな神経学的所見は、脊髄・
 末梢神経疾患に対する診療には不可欠であり、徹底して指導を行う
頭痛の正しい診断方法
 
はもとより、他科との共有部分を有する、めまい診療、しびれの臨床についても自信を持って診療
 できる実力をつけられるように教育する。
  手術については、当科は脳動脈瘤や脳出血の手術は当然のことながら、頭蓋底腫瘍や各種
 バイパスなど
、高度の技術を要する分野を専門としている。また、整形外科との境界領域でもある
 脊髄脊椎外科も専門の1つとしており、最新の手術方法も含めてすべてのジャンルで良好な成績
 をあげている。大学病院や大きな総合病院からの紹介患者も多く、豊富な内容を経験できる。
 後期研修医には、ステップワイズに手術手技を収得してもらうが、一定の範囲を超える分野に対して
 は、個別の能力と臨床に取り組む姿勢、患者に対する態度等を考慮して機会を与えるかどうかを
 判定する。
  血管内治療も当科の特徴の1つであり、専門医が高頻度に治療を行っている。まずは血管撮影
 の指導を受け、これをマスターできれば各人の興味に従って、血管内治療の助手を多く経験できる。
  
当科における後期研修の特徴をまとめる。当科で教育を受けると、頭蓋底腫瘍、バイパス手術、
 脳動脈瘤から脊髄手術まで、幅広い手術を勉強できるだけでなく、血管内治療も普遍的に
 経験でき、手術と血管内治療の両者が居ながらにして十分に勉強できる
ことが特徴である。


(2) 一般目標

  後期研修中に、日本脳神経外科学会に所属して丸6年を経過すると受験資格が得られる脳神経
 外科専門医試験に合格できる実力の基礎と実践力が身につくよう教育することを当面の目標とする
 が、真の目標は、本当に高い臨床力を持つ脳神経外科医を養成することである。


(3) 行動目標

  (4)に示すプログラムを目安とするものの、後期研修医の能力、勤務態度、患者への接遇、ナース
 やコメディカルとの協調性、向上心、勤勉さや熱心さ、モチベーションによって与える仕事を調整
 する。すなわち、各人のやる気や態度に対して公平に機会が与えられ、悪平等は排除する。


(4) 年次別研修内容 (プログラム)

初期研修 (卒後1年次・2年次)       

スーパーローテートの一環として脳神経外科を選択した場合、以下の後期研修1年目の研修をすでに開始する。すなわち、スーパーローテーターのうちから脳神経外科医としてのスタートを切ることができる。

後期研修1年目 (卒後3年次)

@神経学的所見の取り方のマスター A神経学と脳・脊髄の解剖の理解 B神経放射線学的所見 (CTMRI・脳血管撮影)の読み方をマスターする C救急患者に立ち会い、脳卒中患者のマネジメント、薬物の用い方と血圧管理をマスターする D脳血管撮影に立ち会い、徐々に手を動かす機会を得る E慢性硬膜下血腫や脳室ドレナージなどの手術を専門医の指導の元に行う F開頭・閉頭を段階的にマスターする G脳動脈瘤・頭蓋底手術などの助手を務める H頭部外傷の手術を専門医の指導の元に行う Iマスターの仕方が早い医師は後期研修2年目のプログラムに移行する

後期研修2年目 (卒後4年次)

@脳血管撮影を専門医の指導の元で1人で行う。おおむね20例を経験したところで、脳血管撮影のムンテラを行い、承諾書を得る A脳卒中患者の担当医となり、ある程度の患者管理の裁量権を与える C脳出血患者に対して専門医の指導の元で術者として手術を行う D血管内手術の助手を務める Dくも膜下出血患者の担当医となり、手術顕微鏡を用いてシルビウス裂の開放を専門医の元で行い、適切と判断されればクリッピングまで行う E症例に応じて脳腫瘍の術者となる Fマスターの仕方が早い医師は後期研修3年目のプログラムに移行する

後期研修3年目 (卒後5年次)

@脳血管撮影を基本的には1人で行う。適宜、専門医の立ち会いを要請する A脳梗塞・脳出血患者の主治医となるが、カンファランスにて専門医のチェックを受ける B 脳梗塞患者のバイパス手術、CEAの術者となり得る C血管内手術 (コイル・ステント)の第1助手ないしは専門医の指導の元で実際に手を動かすDマスターの仕方が早い医師は後期研修4年目のプログラムに移行する

後期研修4年目 (卒後6年次)

患者に向き合う態度や姿勢、医療に対する熱心さ、技量に応じて、脳腫瘍手術、くも膜下出血に対する動脈瘤クリッピング、バイパス手術、CEA、血管内手術を専門医の指導の元で行う。


(5) 週間スケジュール

   月曜日: 朝カンファレンス、
手術
   火曜日: 朝カンファレンス、病棟総回診、
手術
   水曜日: 
血管内治療
   木曜日: 朝カンファレンス、
血管内治療
   金曜日:  
手術
   土曜日: カンファや手術なし


(6) 応募資格

  脳神経外科を真剣に極めて行きたいと考えている医師で、手術や血管内治療に興味を
 抱いている人。
決して手先の器用さや知識の欠如を問題とせず、患者にやさしく、素直で礼節を
 重んじる、誠実で真面目な医師。周囲の人間との協調性
も重要視する。


(7) 指導医名簿

  部長 河野 道宏、浜松医大 (S62年卒)、頭蓋底腫瘍・脳血管障害・脊椎脊髄外科
  医長 佐藤 博明、筑波大 (S63年卒)、血管内治療、脊椎脊髄外科


(8) メッセージ

  現在の時点でも、大学病院に勝るとも劣らない大きな手術や血管内治療が多く、さらに中野に
 新病院移転後は、手術件数は倍増し、若手の先生にとっても手を動かす機会が増えることが
 確実視されています

  是非、われわれのチームに加わって、徹底的で実践的な教育を受けて下さい。       

                                          脳神経外科部長 河野 道宏