第15回循環器被ばく低減技術セミナー
主  催 :全国循環器撮影研究会
循環器画像技術研究会
神奈川アンギオ研究会
共  催 :日本放射線技術学会 放射線防護分科会
放射線計測分科会


開催日時 :平成19年12月1日(土)
開催場所 :神奈川県
被ばく低減技術セミナー開催の経緯 と「被ばく線量低減推進施設」認定について
    昭和大学藤が丘病院  加藤 京一氏
講義1 放射線の人体への影響
     北里大学病院  高松 太郎氏
講義2 X線装置による被ばく低減
     榊原記念病院  武田 和也氏
講義3 X線防護用具
     昭和大学病院  武  俊夫氏
講義4 品質管理
     横浜市立大学附属市民総合医療センター  石川 栄二氏
講義5 循環器FPD搭載X線装置の管理
     昭和大学横浜市北部病院  佐藤 久弥氏
講演 −IVRによる皮膚障害の症例とその対策−
     昭和大学横浜市北部病院 皮膚科診療科長  宋  寅傑 先生
講義6 線量測定法
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
講義7 ガイドライン測定法 と 面積線量計の簡便な使用方法(実習説明)
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
講義8 測定実習
     NTT東日本関東病院  塚本 篤子氏
     横浜市立大学附属市民総合医療センター  坂野 智一氏
            〃            千葉 敏春氏
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
終了式  修了証書授与

実行委員長 山梨大学医学部附属病院 放射線部 坂本 肇

 今年度(平成19年度)も例年通りNTT東日本関東病院にて、全国循環器撮影研究会主催の循環器被ばく低減技術セミナーを循環器画像技術研究会が開催した。循環器画像技術研究会によるセミナーの開催は平成11年より毎年行われて、今年度も被ばく低減セミナーの発足から全国展開されるまで重要な役割を担ってきた加藤京一氏(循環器画像技術研究会 副会長、昭和大学藤が丘病院)を中心に実行委員、事務局の方々、また、共催のJSRT防護分科会・計測分科会の協力を得てセミナーを行った。しかし、今年度は例年と異なり、年2回のセミナーを開催した。具体的には、神奈川アンギオ撮影研究会と合同で横浜市立大学医学部附属市民総合医療センターにて行った。年2回の開催が立案された段階において、幾つか危惧した点があった。第一は2回のセミナーに受講生が集まるか、第二は他の研究会との合同開催が初めてのため、どのように運営していくかなどである。受講生の問題については循環器画像技術研究会の若松修会長より受講生の希望人数が少なくてもセミナーは行おうという強い意志により、合同開催については両研究会に所属している方々の努力により準備が始まった。結果的には、2回のセミナーとも受講生は募集定員に達し、合同開催も両研究会に所属している菊地達也氏、石川栄二氏(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター)の運営によりスムーズに開催出来た。
 第13回循環器被ばく低減技術セミナーは平成19年9月1日(土曜日)に29名の参加、第15回循環器被ばく低減技術セミナーは平成19年12月1日(土曜日)に39名の参加があり、合計68名が今年度のセミナーに参加して頂いた。受講生の方々は大変熱心であり、本セミナーの必要性と継続性を改めて実感した。講師の方々も受講生に理解しやすい説明や解説を行い、必要に応じて自施設での実施例や経験例などを加え、充実した講義が行えたと思われた。また、セミナーテキストの講義に加え、昨年度のセミナー後のアンケート結果を受け、今年度はFPD関連の講義として画質、線量、品質管理などについての特別講義を佐藤久弥氏(昭和大学横浜市北部病院)にお願いした。この講義に関しては、内容が直ぐに仕事に結びつきFPD装置の購入や管理に役立つと受講生からの評判も高かった。
 特別講演には、第13回セミナーで「放射線被ばくの臨床と病理」と題し東京大学医学部附属病院准教授・緩和ケア診療部長の中川恵一先生に講演頂き、第15回セミナーで「IVRによる皮膚障害の症例とその対策」と題し昭和大学横浜市北部病院皮膚科診療科長の宋  寅傑先生に講演頂いた。中川先生の講義は、JCOの放射線事故による放射線の人体への影響の凄さ、時間と共に薄れていく放射線に対する意識の再認識など、スライド写真とその内容は受講生にとっては貴重な体験と思われた。また、宋先生の講義は、実際のIVR時に起こった皮膚障害事例とその治療に関する話で、身近に起こった皮膚障害のスライドには受講生の視線が釘付けであった。
 測定実習に関しては、インターベンショナル基準点での基準線量の測定方法(透視、撮影時の装置出力線量の測定)、面積線量計の利用方法(面積線量から皮膚線量への変換方法)、装置線量表示値の確からしさの測定と表示値からの皮膚線量への補正方法などについて、短時間であったが有意義に行うことができた。
 今年度のセミナーでは、セミナー受講者施設に認定が与えられる「被ばく線量低減推進施設認定」の普及啓蒙のために加藤京一氏より施設認定の取得方法、申請方法などについて説明があった。是非、セミナーを受講し多くの施設で認定を受け、日常業務に役立ててもらいたいと考える。下記に本年度のセミナーのプログラムを記す。


「第13回循環器被ばく低減技術セミナー」
被ばく線量低減推進施設認定について 
     昭和大学藤が丘病院 加藤 京一 氏
講義1 放射線の人体への影響 
     千葉県がんセンター 今関 雅晴 氏
講義2 X線装置による被ばく低減 
     昭和大学病院 大沢 三和 氏
講義3 X線防護用具 
     NTT東日本関東病院 福地 達夫 氏
講義4 品質管理 
     横浜市立大学附属市民総合医療センター 石川 栄二 氏
講義5 線量測定法 
     横浜市立大学附属市民総合医療センター 坂野 智一 氏
講義6 FPD関連
     昭和大学横浜市北部病院 佐藤 久弥 氏
講演 −放射線被ばくの臨床と病理− 
     東京大学医学部附属病院 准教授・緩和ケア診療部 部長 中川 恵一 先生
講義7 面積線量計の簡便な使用方法(実習説明)
     山梨大学病院 坂本 肇
講義8 測定実習
     NTT東日本関東病院 塚本 篤子 氏
     埼玉県立循環器・呼吸器病センター 田島 修 氏
     山梨大学病院 坂本 肇

「第15回循環器被ばく低減技術セミナー」
被ばく低減技術セミナー開催の経緯 と「被ばく線量低減推進施設」認定について
    昭和大学藤が丘病院  加藤 京一氏
講義1 放射線の人体への影響
     北里大学病院  高松 太郎氏
講義2 X線装置による被ばく低減
     榊原記念病院  武田 和也氏
講義3 X線防護用具
     昭和大学病院  武  俊夫氏
講義4 品質管理
     横浜市立大学附属市民総合医療センター  石川 栄二氏
講義5 循環器FPD搭載X線装置の管理
     昭和大学横浜市北部病院  佐藤 久弥氏
講演 −IVRによる皮膚障害の症例とその対策−
     昭和大学横浜市北部病院 皮膚科診療科長  宋  寅傑 先生
講義6 線量測定法
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
講義7 ガイドライン測定法 と 面積線量計の簡便な使用方法(実習説明)
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
講義8 測定実習
     NTT東日本関東病院  塚本 篤子氏
     横浜市立大学附属市民総合医療センター  坂野 智一氏
            〃            千葉 敏春氏
     山梨大学医学部附属病院  坂本  肇
 セミナー受講後の受講生のアンケート結果は既に全国循環器撮影研究会のホームページに掲載されているため割愛するが、講義内容にほとんどの方が興味を持ち、理解を示し満足し、測定実習の必要性については大多数の受講生が必要と考えていた。しかし、講義の内容が多く進み方が早いため理解が難しい点、測定実習は時間を費やしゆっくり実習を行いたい点など例年と同様な指摘がなされ、今後のセミナーの日程などについて再検討の必要性が示唆された。また、遠方よりセミナーに参加される方のために各推進母体での開催が望まれる。
 循環器被ばく低減技術セミナーは、他にこのような統一的体系的なセミナーがないこと、実際の臨床業務に直結していることなどから、今後さらにセミナーの充実と継続のために努力する必要があると考える。最後に、セミナー開催場所および実習の装置や機器の使用を快く承諾頂きました、NTT東日本関東病院 若松修技師長、横浜市立大学附属市民総合医療センター 天内廣技師長に深くお礼を申し上げます。また、当日の講師の方々、循環器画像技術研究会の事務局、神奈川アンギオ撮影研究会の関係者、共催のJSRT防護分科会・計測分科会の関係者(特にご苦労頂いた加藤英幸防護分科会長)、テキスト作成などにご尽力された全国循環器撮影研究会のセミナー関係者の方々にお礼を申し上げます。

社会保険 筑豊病院
鳥江 功二 (循環器画像技術研究会)

今回、横浜市立大学附属市民総合医療センターにて、「循環器被ばく低減技術セミナー」に初めて参加させていただきました。日頃心臓カテーテル検査に携わる中で疑問に思うことが数多くあり、それらを解決するためにどのようにすればいいのか悩んでいたとき、インターネットで循環器画像技術研究会と全国循環器撮影研究会を知り入会しました。その中で今回の循環器被ばく低減技術セミナーの開催を知り、私の施設でどこまでできるか確認するために参加しました。

坂本実行委員長&加藤副会長

受講中

宋 先生

講義内容は幅広く、まず基礎として放射線の人体への影響やX線装置による被ばく低減、X線防護用具についての講義がありました。

放射線の人体への影響については、被ばく線量に対するデータを多く提示していただき、診療放射線技師として被ばく低減を実行するためには知っておくべきデータばかりでした。また患者様や医師、スタッフに対する説明をするための資料としても大変参考になりました。

X線装置による被ばく低減については、今すぐ実行できることとして、 (1)透視時間を短く、 (2)低レートパルスを使用、 (3)必要最小限の撮影レート、枚数、 (4)付加フィルタの使用、 (5)透視、撮影線量の適切な調整、 (6)焦点皮膚間距離を大きく、 (7I.I.を患者に近く、 (8)照射野を必要最小限に、 (9)過度のインチアップを避ける、 (9)継続した装置管理 とのことでした。自施設において実行できていること、できていないことがあり、患者様または手技によって撮影、透視方法を変更し、医師との連携をさらに密にしていくことの必要性を実感しました。

またX線防護用具については、散乱線分布や他施設の工夫された防護具、アンダーテーブル方式とオーバーテーブル方式での散乱線被曝の比較等をスライドで見せていただき、大変参考になりました。その中でも防護エプロン着用無しでの検査可能な防護用具には驚かされ、散乱線分布を把握することの大切さを感じました。

続いて品質管理、循環器FPD搭載X線装置の管理の講義においては、つい後に考えてしまう管理の重要性を再確認することができました。品質管理により据え付け時の性能をできるだけ保持し、機器の異常をできるだけ早く発見することは、検査内容、患者様の被ばくに関連するものです。後ではなく、最初に検討すべき項目なのではないでしょうか。

次に、昭和大学横浜市北部病院、皮膚科診療科長の宋寅傑先生に 『IVRによる皮膚障害の症例とその対策』 という題で講演していただきました。本やインターネットでしか見たことのないような写真やデータを、実際経験した宋寅傑先生から講演していただけるということで、参加者全員スライドに釘付けでした。どの施設においても起こりえることであり、診療放射線技師による被ばく低減の努力や、医師やスタッフの被ばくに対する教育の重要性、放射線皮膚障害の深刻さを改めて考えさせられ、この講演を聞けただけでも遠くから参加した甲斐がありました。

最後に、自分にとって最重要項目であった線量測定法、「ガイドライン測定法と面積線量計の簡便な使用方法」の講義と測定実習が行われました。自施設の機器には面積線量計が搭載されていませんが、23年後に新病院が建設予定ですので、その前段階として測定を経験できたことが、これから心臓カテーテル検査に携わっていく上で重要になってくると思います。また、インターベンショナル基準点での測定は、他施設との測定結果と比較し、自施設がどの程度被ばく線量を低減できているか把握することができますので、すぐにでも測定したいと思っています。

線量測定の実習

今回、行き北九州530発、帰り羽田1840発と日帰りのハードスケジュールでしたが、内容の濃い講義に参加することができました。時間さえあればこの機会に講師の方々へ多くの質問をしたかったのですが、時間がなく残念です。循環器被ばく低減技術セミナーは講義を聞くだけでなく、テキストやプリントで復習でき、理解できるようになっています。まだ参加していない方にはぜひ参加していただきたいです。

次回もこういったセミナーが開催されるのを楽しみにしています。循環器被ばく低減技術セミナーで得た知識を、スタッフ教育、インターベンショナル基準点での測定、被ばく線量低減推進施設認定、血管撮影専門技師認定等に生かしていければと思います。

最後に当日の講師の方々、並びに循環器被ばく低減技術セミナー関係者の方々に深く御礼を申し上げます。(2007.12.1

講師と実行委員